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こち亀がおすすめの人
- 一般知識、教養になる漫画が好き
- マニアックな深いネタを読みたい
- 連載時の時代背景がわかる作品を読みたい
令和のいま、あらゆるジャンルに精通したニッチなオタク漫画が売れている。しかし時代を遡ると、こち亀はオタク漫画の先駆けと言えるのではないだろうか。
主人公の両津は、何かと物知りで一般的に知られているものから、確実にマニアしか触れない領域まで手を出している。作者の秋元氏による知識&取材力の賜物だが、知らない人にも楽しく読ませる秘密はここだ。
退屈させないためのギャグベースを作り、昭和~平成の時事ネタを扱う。それでいて、個性豊かなキャラを自由自在に登場させた。200巻で完結したがもっと続いても飽きられなかったと思えるほどの名作。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のストーリー
主人公・両津勘吉は東京葛飾にある亀有公園前派出所に勤務する警察官。両津は仕事の合間に趣味や副業で金儲けに手を出すなど、警察としてはかなり不真面目。
そんな両津が、同僚や周辺人物を巻き込むギャグ、コメディ漫画。登場人物も個性が強く、サブキャラだけでも十分にエピソードが成立することもしばしば。
下町に育った両津の人柄により、時に人情的な話も織り込まれ飽きない作風。連載時に話題になっている物をネタにするなど、一般知識や教養としても役立つ作品。
お約束パターンもあらゆるネタに精通したオタク性で飽きない
©こちら葛飾区亀有公園前派出所 集英社
こち亀はお約束ギャグ漫画である。例えば両津自身が、自己利益に繋がるような話を見つけると、全力で乗っかり金儲けを企てる。しかし上手く行かず、最後は大原部長に怒られるという流れだ。
これが普通のギャグ漫画だと、シンプルなお約束パターンとなり結果的に飽きられてしまう。ここでこち亀が取っている手法が、ディープなネタを間に挟むことだ。
時代によって、流行するものや専門家しか知らないような話も多く登場する。車だったり機械だったり、商売の仕組みだったり。オタクだなと言われそうな物事も多く出てくる。
こういった話が間に入るため、読者としては勉強になるし、時代の最先端を学ぶこともできる。仮に連載終了している今読むとしたら、時代の流れを感じることも出来るだろう。
結果的に、常に新しさの中にいられるのだ。最後は両津に天罰が下るオチが分かっていることを含めて面白い。喜劇的なノリだが、古臭くなくワクワクさせられる。
サブキャラがこち亀を引き立てる
さすが全200巻もある作品。連載が長い分、登場キャラは豊富でこち亀の引き立てに重要な役割を担っている。
中川や麗子は欠かせない存在で、登場時から金持ち。世界を股にかける会社を持っており、お金に汚い両津を活かすには相性がいい。もちろん漫画的な意味で(笑)両津の活動にも幅を持たせることにもつながっている。
絵柄に合った可愛いキャラも多い。私が好きなのは、擬宝珠纏と擬宝珠檸檬だ。特にレモンは子供ながらに「神の舌」を持っており、一口食べたら味を分析できるという能力を持ったすごい少女。
レモン(幼稚園児)に大人たちが意見を聞くという場面があるが、秋元氏の伝えてくるシュール性に笑った思い出。
大阪の通天閣署に勤める御堂春も好きだ。お金持ち&イケメンに弱いというわかりやすい性格が可愛い。挙げれば切りのないサブキャラも魅力的で、こち亀ファンは延々と語れるはず(笑)
ギャグ漫画だからこそ、たまに掲載される「人情&感動モノ」が良い
こち亀。第59巻「おばけ煙突が消えた日」が好きだった。少年時代の両さんの記憶。この「おばけ煙突」が建っていた時代は生まれていなかったが、当時は都内に向かう京成電車の窓から見えていたのだろう。一度でいいから見てみたかったと思う。 pic.twitter.com/COAa0SMRQQ
— 風太 (@futanaritakara) September 4, 2016
裏テーマというか、極稀に描かれる人情編は素晴らしい。ギャグ主体の漫画だが、両津の幼少期の話を筆頭に泣ける話が出てくる回も。
私は子供の頃に読んだのに「おばけ煙突」や「勝鬨橋」などのエピソードは心に響いた神回だと今も覚えている。ジャンプで読んだ時は、いつもと違うこち亀の雰囲気に圧倒されたほど。
両津の子供時代なので、大半の読者が生まれる前の話なのだけど。誰もが持つ、子供時代に体験したノスタルジックな思いに触れさせてくれるような懐かしさがある。
大人になった両津はゲスな部分が目立つのだけど、少年のような純粋さも持ち合わせており、良い子供時代を送ったことが作品を通じて見えてくるのが良い。