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月華美刃がおすすめの人
- 和風ファンタジーが好き
- 皇族や竹取物語に対する一般知識がある
- 少女が困難に立ち向かっていくストーリーが好き
万人受けする作品とは思えないながら、練りに練られたであろう展開は読者を夢中にさせる物があった。小中学生には難しく感じるかもしれないが、質の高い和風ファンタジー冒険作。
皇族の権力闘争や、独特の世界観、ニッチな設定が若干気になるものの話にまとまりがあって良い。5巻と短いので駆け足になるかと思いきや、ラスボスを含めたストーリーは圧巻。
バトル展開も構図がよくビジュアルも上手い表現力。コマ割が多いので、人によっては負担に感じるかもしれないがSF系が好きな人なら満足の内容。
「月華美刃」のストーリー
遠藤達哉の「月華美刃」を読んだ。画も話も世界観も良く出来ている。こういうよく出来ている作品を書ける作家さんと言うのは好き。
— 武倉サボテン丸 (@tkyoukey) September 2, 2010
竹之内フジヤに治められている月の皇都・迦護女都(カゴメノミヤコ)。しかしフジヤが病に倒れたため、皇位奪還を狙う梅之内家がテロを起こす。
フジヤの娘・竹之内カグヤは母が倒れたことを機に、皇女の自覚を持ち始める。テロによる襲撃を回避し穢星(地球)へと渡ることになった。
「複雑」に感じる設定は読み進めると理解が進む
©月華美刃 集英社
皇族や権力闘争、竹取物語がベースとなっているため、読み手の知識や年齢によって面白さは変わってくる。私など、無知な人間なのでアラフォーにも関わらず複雑さを感じた。
ただでさえ平安時代を近代に置き換え、和風ファンタジーをやっているものだから・・。あれこれ設定についていくのも大変だ。
ただ、この複雑さは設定によるもので、読んでいけばおおよそ問題にならない。オリジナリティを作り上げるために必要だったもので、根本的には王道の少年漫画。
主人公・カグヤに取って大事な母・フジヤを助けるべく冒険する話なので、ラスボスに至るまでの一貫性にブレはない。
作中に出てくる見慣れない専門用語が気になったとしても、読み進めていくと話のまとまりがわかる。親子愛だったり、仲間のための戦いだったり。普遍的なテーマの面白さがある。
ラストの後味の良さに感服
「打ち切り」や「駆け足で終わった感」という感想も見かけるが、決して雑に終わっていると思わなかった。むしろ、テンポが良く仕上げの上手さが輝いていたと言えるほど。
特にラストのエピソード。カグヤとの関係性を含めた、ラスボスなりの想いがしっかり描かれており、物語の締めにふさわしい。
複雑な設定に感じていた作品だが、最後は読者に伝えたいメッセージ性に焦点を当てており、誰が読んでもグッと来るであろう感動がある。
評価としては普通に面白かったのだけど、センスの良さに感服。すでに読んでいる方なら、このラストの良さが伝わると思うのでネタばれ感想も書いて終わりにしたい。