サスペンス

非現実的な復讐ストーリーも被害者に激しく共感「イジメの時間」

イジメの時間

出典:Amazon

総合評価 B (ふつうに面白い)

イジメの時間がおすすめの人

  • イジメ経験、イジメられた経験のある人
  • イジメに対する私刑(復讐)を見たい
  • 作中のイジメ内容が胸糞悪さ全開でも平気

徹底したイジメの風景を描いた作品。漫画なので非現実的なことも起こっているが、元イジメられっ子の私としては激しい共感を覚えたのも事実。

本作は、いわゆる「それイジメじゃなくて犯罪」という内容だが、やられっぱなしで終わらないところがミソ。イジメられる主人公による復讐展開があるため、胸糞悪さと爽快感が混ざっている

イジメをやられた側の心情が描かれており、どれだけ傷が残ることかを示唆しているかはもちろん。イジメる側も、一般的に家庭環境に問題があることに触れており、見入ってしまう作品。

「イジメの時間」のストーリー

©イジメの時間 くにろう

舞台は中学校。主人公・天童歩は、些細なことで不良生徒の鈴木山と若保囲に目をつけられる。試験の際に「筆箱を隠した」と、鈴木山から濡れ衣を着せられることに・・。

鈴木山からは「許してほしければ先生を殴ってこい」と言った命令が出るなどエスカレートしていき、イジメのターゲットとなっていく。

天童以外にも被害に遭う生徒や、加害者が増えるなどイジメを巡るストーリーが展開されていく。

鈴木山、若保囲らの醸し出す不良感にリアリティ

天童をイジメている鈴木山、若保囲の二人組。彼らの雰囲気は、作者のくにろう氏によってリアリティある不良像として成り立っている

彼らをイジメられる側の視点から強調しており、中学生なのにヤクザのような怖さがあるのだ。私も実体験としてイジメを経験しているが、中学生くらいのイジメが一番怖いと思う。

子供でもなく大人でもない、中途半端さがあるからこそ怖いもの知らずというか。そんな怖さを、鈴木山と若保囲を見て感じ取った。

これは映像作品だと味わいづらいものがある。イジメは現実世界で起こるが、その恐怖感はドラマじゃ表現できないという難しさに挑戦している作者がすごい。

イジメ内容に胸糞悪さも、復讐までの我慢

本作の良さとしては、イジメ描写に大変な胸糞悪さがあるにも関わらず、天童からの仕返しがあるところだ。一般的に、イジメ被害は泣き寝入りなので、ここが見せ所でもある。

私を含めて、やられっぱなしで思春期を過ごした人には、良くないことではあるけれど心地いい復讐劇となるはず。かれこれ、私は20年以上も前のイジメを忘れていないので。

序盤はひたすらイジメを受ける天童を見なければいけないが、復讐として仕返しするようになってからは見もの。どういう手段で、どのような制裁を加えるのか。

天童が親や教師といった大人に救われず、いち個人として復讐に走らないといけない過酷さはあるものの・・。「やられっぱなしではない」というヒーロー性すら感じさせてくれる。

イジメ加害者の欠陥性も描いている

鈴木山や若保囲もイジメに至るまでの事情があることなどを描いているのは良かった。例えば、家庭環境が描かれていることだ。

イジメ加害者に限らず非行に走りがちな人間にも、言い訳ではないがそうなる理由が少なからずある。そこには育った環境は大きく、この部分に触れているのは良かった。

イジメ問題は「根っからの悪人」による犯行だと決めつけては解決にならない。こういった人間を生まない環境作りの必要性も考えるきっかけにもなる漫画。

ストーリーも単純ではなく、二転三転あり読み手の心を上手く把握していると思う。イジメ表現作としては、よく出来ており終始気になる展開に満足。

イジメの時間 (1)

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