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惡の華がおすすめの人
- 中二病マンガを探している
- 変態が出てくる作品が読みたい
- 思春期の言葉にできない心情表現が好き
ネットを中心に「中二病」というフレーズは使われるが、具体的にどういった状態をイメージするかは個人差があるだろう。そんなイメージの世界を、変態サスペンスとして描いたのが本作。
そう簡単に思いつくものではない鬱屈した世界観を漫画として表現できており、私の知る限りでは中二病マンガにおける最高位の存在。エロティックでありアーティスックでもあり、時に文学的でもあり。
思春期の暴走を描いているが、その芸術的な描写に痺れてしまった。「クソムシが!」は本作を代表するフレーズだが、このひと言だけであらゆる思いを吐き出させていることにもご注目。
「惡の華」のストーリー
©惡の華 押見修造
主人公・春日高男は、クラスメイトの佐伯菜々子に想いを寄せていた。そんな春日は、ある日の放課後、佐伯の体操着を出来心で盗んでしまう。
この行動を、同じクラスメイトの仲村佐和に目撃されていた。仲村は、この出来事をきっかけに春日に無茶な要求をするようになる。
しかし意外なきっかけによって、春日は佐伯と付き合うことに。この思春期男女3人を中心とした、現実社会に対する鬱屈した思いや閉塞感が表現されていく。
「体操着を盗むのはそんなに変態?」と思わされるほどの変態フェチパレード
初回から春日は、佐伯の体操着の匂いを嗅いで、そのまま盗むという変態行為に走る。読んでいる身としては、「うお・・いきなり盗むんかい!」と思うのだけどこれは序章。
春日だけでなく、仲村や佐伯もどんどん変態的な行為を行う。春日と仲村の変態性はもちろんながら、常識人そうな佐伯も混ざってくるためまさに変態フェチパレード。
変態であるという内容や根拠については読んでのお楽しみだが、展開的に想像しづらい話が用意されていたのが良かった。
初めて読む人には、「体操着盗んでどうなるんだ(ドキドキ)」という、常識的な変態性への意識が向く。これが回を追うごとに、体操着を盗むくらいなら普通かなと思わされるので怖い(笑)
作者の押見修造氏の世界観だからこそ描けるわけで。変態を描くことや語ることの難しさを、本作を通して知ることになるかもしれない。
アーティスティックに広がる思春期の言葉にできない精神・心理描写
惡の華最終巻まで読んだけど、ここまですごいと思った漫画に久しぶりに出会った気がする!
最近読んだ漫画の中ではぶっちぎりで面白かったかな
内容は気持ち悪くて時に理解できなくて…
でも伝えたいことは何となく分かる…
こんな素晴らしい漫画にはなかなか出会えないからほんと今日読んでよかった pic.twitter.com/zT0LBdwTd9— Rio ☆漫画好き☆ (@dGY4bmTK8VZcAKR) June 10, 2020
ところどころ、何を意図しているのかわからない描写もある。これは思春期特有の、言葉で表現しようのない精神的・心理的な描写を指しているのだけど。
作中の至るところで、彼らの心の内が描かれるのだけどもはやアート。芸術的な表現をするため、正直一部の描写だけをまとめて個展をやっていても違和感がない。
もし文学として表現するなら、どのように書くのかをプロの小説家などに聞いてみたいところ。というくらい、言葉にできない描写が魅力でもある。
私もそれなりに閉塞感に包まれて思春期を過ごしたため、本作で表現されるような世界観はなんとなく理解できる。「気持ち悪い」と思う絵も多いのだけど、その気持ち悪さも含めて楽しんだ。
物語を絶対的な面白さにしたサスペンス
本作は中二病の描写が多いが、展開はサスペンスそのものだ。とにかくストーリー的に先が見えにくく、どうなるかわからない不安や恐怖感を煽ってくる。
春日はどうなるのか。仲村は何がしたいのか。佐伯は・・。狂気に満ちているため、読み手としても気になってしかたがない。
意図的にホラーっぽく描いているところもあり、ただの中学生が中二病を発症しているわけじゃないぞという空気感に包まれている。
「クソムシ」を発端とした仲村のフレーズも怖い。まるで何かに取り憑かれたかのような、そこから抜け出せない苦しみのような。変態サスペンスとして歴史に名を残すだろう。