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テセウスの船がおすすめの人
- 殺人事件の犯人探し・推理が好き
- 家族愛や親子愛の描写が好き
- ハラハラしたりスリリングな展開を希望
ドラマ化によって話題になったことで一気読みした。結論から言うと、過去に似たような漫画はあったものの面白いと感じた。
展開の上手さと言うべきか、話の持っていき方にドキドキさせられ、次はどうなるのかというスリルがある。
殺人事件が事前に起こることが分かっているので、その事件を阻止しようと奮闘する主人公に感情移入してしまう。サスペンス好きだが、十分に満足させられる内容であった。
「テセウスの船」のストーリーと見どころ
©テセウスの船 講談社
1989年に起こった北海道の音臼小学校における無差別毒殺事件。児童、職員を合わせて21人の犠牲者を出したことで、駐在所の警察官・佐野文吾が逮捕される。
しかし佐野は冤罪を訴えており、事件から28年後に佐野の息子である田村心が、事件の真相を探ることに。
事件の起こった音臼村に行く途中、霧に包まれタイムスリップ。1989年の音臼村に辿り着いた心は佐野に出会う。
ざっくりストーリーを伝えるとこういう話だ。心には犯人こそわからないが、これから起こる事件については知っているので、どうなるかといった展開が見どころ。
殺人事件の推理は非常に難しい
よくある話ではあるが、登場人物が多く出てくる中から、犯人を推理していく流れになる。どの人も怪しく見えたり、あからさまにこいつが犯人という演出があったり。
でも最後までなかなか分かりにくいので惹き込まれる。1989年に起こることが分かっているため、とにかく先回りして犯罪が発生しないようにするのだけど、思うようには行かない。
ここはありがちとも言えるけど、良かれと思って行動しても、未来がいい方向に変わるとも限らない展開もある。
巧妙に伏線を散らしているので、ちょっとボサーっと読んでいると、話が混乱するところもあるのでご注意(苦笑)
冤罪でバラバラになるも家族愛はそこにある
家族の絆も強く描かれていることに心を打たれた。父親である佐野文吾は、冤罪で捕まってしまうのだけど、決して事件を起こすような人物ではない。
冤罪によって残された家族が世間からバッシングされているところからストーリーは展開されるが、過去に戻った際にわかる「事件前の佐野一家」が温かいからこそ胸に刺さるものもある。
佐野文吾はもちろん、この家族が温かいからこそ、事件によって冤罪に追い込まれる一家が不憫でならない。
「こういう家に生まれたら幸せだろうな」という代表的な家族。こういった家庭の主が無差別殺人の犯人にされることが、二重三重に感情移入を誘うのだ。
次は誰が被害者になるのかハラハラする
夫がレンタルしてきた漫画「テセウスの船」を遅ればせながら読み始めたのですが、想像していたより怖くて、あわわ……と震えています。今、4巻。ネットで真犯人のネタバレを見ようかなと思うくらい、自分の恐怖のツボを突かれています。
— カエティ (@8kaetee8) June 2, 2020
タイムスリップするので、事前に起こる事件の予備知識を主人公の心も、読者も知っている。ただ、物事は思い通りに運ばず、起こるはずの事件が起こらなかったり。
だからと言って安心できるはずもなく、このズレによってハラハラ感は煽られる。事件が起こらず平和になったちゃんちゃんと思えるはずもなく。
犯人がいる以上は、何らかのアクションを起こしてくるであろうことも予測でき、次の被害者が出るのがとにかく怖い。
タイムスリップで過去を変えたことで未来が変わっていくが、この変化に対する怖さの表現が的確だった。よく組み立てられた作品なので、推理や事件ものファンは一読の価値あり。