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いいゆだね!がおすすめの人
- 下町人情モノが好き
- 銭湯文化に興味関心がある
- 「こち亀」のファン
こち亀が終わって、全く秋本治氏の作品を読んでいなかったのだけど。やっぱり秋元節というか、コミカルな笑いのセンスは抜けているし、下町人情を描かせたら素晴らしい感動がもらえることを再確認。
本作は廃業していく銭湯を存続させる話なのだけど、笑いあり感動ありのお手本のようなテンポの良さが魅力。次から次に起こるトラブル&解決の展開が面白かった。
それでいて主人公・マリアをはじめとしたキャラがいい味を出しており、2巻で完結させたのが勿体ないと感じるほど。心温まるテーマに飢えている人はすぐに読むべし。
「いいゆだね!」のストーリー
©いいゆだね! 集英社
東京・墨田区にある廃業予定の銭湯。しかし、そんな廃業寸前の銭湯にやってきた主人公・マリアが運営継続を申し出る。
何とか廃業を避けられるよう経営努力しつつ、関わっていく人々たちとの人情溢れるやり取りコメディ。
各キャラの魅力を語るとキリがない
『いいゆだね』秋本治 思いつきから保育所を作ったり、メロンパンを売り始めるマリアさんの行動力と、秋本先生の解放感ある下町描写がマッチして心地良い 読んでて自然と頬が緩んじゃう(*´ω`*) pic.twitter.com/tIRFTpeqzS
— はるこ (@epandmint_d) March 6, 2018
登場キャラがまず魅力的。マリアの人柄がいい。損得勘定が無いので、人が困っていたら助けるし、それでいて美人なので完璧な女性に思える。ちょっと攻撃的な手段に出ていることもあるけれど(苦笑)
街でうずくまっている人がいたら、ひと目を気にせず声をかける。待機児童問題で困っている親御さんのために、銭湯を保育園に変えていくなど、社会問題に向き合う姿もいい。
逆に、銭湯経営の主である熊五郎というおじいちゃん。この人物が、ケチでありスケベで、マリアが頑張っている裏でコソコソ儲けに走っていたり。
人間の美しい部分と、薄汚い部分を同作品でこれでもかというほど描いた展開に思わず笑ってしまった。やっぱり、秋元節はプッと吹き出してしまうようなネタがあってこそ。
各キャラに愛情が感じられ、主要メンバーの一貫した立ち回りが良い。ケチでスケベでバカで・・と各キャラの特徴を振り返ると、両さんが色んな人に乗り移っているような気も・・(笑)
下町や銭湯文化への興味関心を刺激
私は東京と無関係のところに住んでいるが、昔ながらの下町や銭湯などの文化には興味がある。そういったニーズを捉えてか、作中では解説が入っている点などがたまらない。
色々と東京には旅行に行ったが、今にして思えば銭湯には行ったことがないので、ちょっと悔やんでいたり。また行ける時が来れば、観光がてら行ってみたいとさえ思わせる内容。
銭湯の煙突はもちろん、内部の細かいところまで描いており、ちょっとした興奮があった。作中では海外から銭湯に入りに来る人もいるが、そういった他所からの目線も大事にしたのだろう。
ちなみに、場所も忠実に再現している。「玉の井ラビリンス」なる町並みには、ググってみたけど歩いたら楽しそう。普通に迷子になる街って何(笑)
ストーリーとしての感動
作中はコメディで進むが、締めはちゃんとしておりストーリーとして感動した。マリアが、とある人の思いを引き継いで頑張るシーンなのだけど。
マリアは性格的に思いついたら、すぐさま行動してむちゃくちゃやるところがある。読者には「後先考えないタイプ」と印象づけてはいるが、実はちゃんと考えていたんだとわかる伏線回収あり。
マリアは日系ブラジル人だけど、心は完全に江戸っ子な感じ。感動するが、涙の押し付けがましさの無い良作だった。