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勇者カタストロフ!!がおすすめの人
- ドラクエ4コマで牧野博幸ファンだった人
- シリアスとコミカルの調和が保たれた作品が好き
- 冒険テーマが現代的な作品を読みたい
90年代のドラクエ4コマブームを牽引した牧野氏。キレのあるギャグを武器に、カッコいい絵と可愛い絵を使い分け読者の心を掴んでいた。私も例外なくファン。
しかし、4コマは各作家に与えられたページが限られており、牧野氏だけの作品を読みたくとも少ない。読者は思う存分、牧野氏の世界観を楽しむ余地がなかった。
そんな作者が世に送り出したのが本作。牧野博幸による牧野博幸ファンのための作品と言っても過言ではない。ドラクエでは無いが、牧野博幸テイストをしっかり盛り込んだ冒険ギャグ。
「勇者カタストロフ!!」のストーリー
©勇者カタストロフ!! エニックス
とある国の王様は、「混乱した世界を救う勇者と王様」にロマンを抱いていた。そこで大魔王の封印を意図的に解いてしまうという暴挙にでる国王。
魔王を倒すべく勇者を探すが、城に呼ばれたのは魚屋として働く主人公・ズックだった。大勇者「シェカネア」を読んだつもりが、ズックは「さかなや」。しかし無理やり王様はズックを旅に出す。
ファンタジーRPG世界観を維持しつつも、現代的なテーマを織り込んだ冒険ギャグコメディ。
牧野博幸氏によるキレと味のあるギャグ展開
勇者カタストロフはいいぞ
牧野博幸先生はとてもいいぞ
ドラクエ4コマなどでも何度も腹筋もぎ取られた— 原谷 (@ganbare0tawa) September 6, 2019
ドラクエ4コマありきで語ってしまうが、作者のギャグセンス&決めゴマは他作家を寄せ付けない上手さ。シリアスにやっているかと思えば、キレと味のあるギャグに急転させ笑いを誘う。
間を使うことにも長けており、絶妙なタイミングでボケを入れる。もともと画力が高いので、その画力によってキャラの雰囲気もガラリと変わり面白い。
真面目からのすっとぼけ展開は4コマ時代から使っており、何を描かせても笑える仕上がりをキープしていた。この力が、本作でも十分に活かされているという訳だ。
牧野ギャグは、ネタとして提供して他の人に描かせても、あまり面白くはならないだろう。ネタと作者の画力によって成立する技なのだ。
特に王様がボケ担当として輝いており、序盤から終盤までいい役に。もちろんズックのボケもあるが、私が好きなのは王様&大臣のペアだった。
勇者が解決するのは現代問題
勇者と聞くと、やるべきことは魔王討伐といった「いかにもドラクエ的なこと」を浮かべがち。しかし本作は、現代社会における問題を解決しようと錯綜したりする。
「商店街で働く人を苦しめる大手百貨店との戦い」を皮切りに、環境・自然保護といったテーマもある。ひたすらギャグでふざけている訳ではなく、牧野氏なりの漫画になっているのは良いことだ。
ドラクエ的な勇者は、魔王やモンスターに困っている人を助けるが、本作は現代的な問題で困っている人を助けるイメージ。
もっとも、ドラクエ4コマから牧野氏を追ってきた人が大半であろう本作。現代問題をあれこれ解決するストーリーが気にいるかは別問題だ。
ファンのために用意された1P漫画がいちばん面白い件
「これを言っちゃおしめーよ」という話だが、第16話の哀・戦士1P劇場がいちばん面白かった。これは、本作を1P漫画で描いたいわば番外編。
起承転結でしっかり笑わせる天才的なセンスを持った作者なので、1P漫画は抜けて面白かった。できれば、ずっと読んでいたくなるような。
ドラクエ4コマを彷彿とさせ、次の話が読みたくて仕方がなかった。私はたまたまkindle アンリミテッドで読んだが、アラフォーになってもこの面白さにワクワクする自分がいたことに驚き。
いち漫画として「勇者カタストロフ」を総評価すると、そんなに面白いとも言えないのだけど・・(汗)牧野博幸ファンとしてドラクエ4コマを読んでいた方は、この16話だけは読む価値あり。
ストーリー全体的には目新しさがないので、作者のファンじゃないと退屈しそうなことだけは伝えておく。贔屓して高評価したいところだが、歯を食いしばっての平等ジャッジ。