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焔の眼がおすすめの人
- 爽快無双バトル漫画が好き
- 胸糞&弱グロ描写が平気な人
- 戦争の歴史に一定知識がある人
冒頭の数ページ。ファンタジーとしての世界観を説明するがあまり、若干複雑な印象を受けたのだけど・・。気がつけば、1話の終わりには作品に惹き込まれていた。
敗戦国の女性の扱いにおける胸糞悪さや、バトルに置けるグロ描写があるため、気分を悪くする場面もあるかもしれない。だが、これらを遥かに上回る正義によって爽快感を得られる作品。
北斗の拳のような世紀末のような。世界の終わりのような。そんな世界観で起こるバイオレスファンタジーに興味があるなら、読んでおくべき名作である。
「焔の眼」のストーリー
押切蓮介『焔の眼』読了。うわあいいわあ。クロというでたらめに身体能力スゴい日本人が相手を蹴散らす。カタルシスがある。日本人が占領されたという歴史観がまたそそるし、その中を生きる少女の悲しさがある。クロよ、色々とタイミング悪いんじゃないのか。日本のことを考えているのかいないのか。 pic.twitter.com/ul9TYUcSlF
— つかっちゃん読書垢@小説チャンネル (@book_tsukatsu) April 13, 2018
1945年、中央アジアの小国・ショルゴールとの戦争に破れた日本が舞台。敗戦国の時代を歩むことになった悲壮感の漂う中、赤線地帯で雑用として働く主人公・沙羅。
沙羅が襲われそうになったところを、格闘家である陀大膳黒(クロ)に助けられる。最初は、クロに対して野蛮な男として距離を取った沙羅だが、クロの助けを得ながら厳しい世界を生き抜く物語。
誇り高き日本人として、クロの爽快感溢れるバトルが見どころのファンタジー作品。
世紀末感が漂う世界におけるクロの無双ぶりがかっこいい
©焔の眼 双葉社
設定上、クロは日本人である。見た目はどう見ても化け物だし、ストリートファイターの豪鬼を彷彿とさせるキャラなのだけど。
めちゃくちゃ強く、とても日本人という通常の人間設定では追いつかないくらい爽快バトルを繰り広げる。とにかく無双するので、クロが戦いに入るとそれだけで面白い。
本作は悪役がとにかく憎たらしい。胸糞悪いことも平気で起こるので、「こいつら全員ぶっ飛ばしたいな」という読者のフラストレーションはすぐに溜まる。
そんな読者の思いと連動するかのように、クロがフルボッコするシーンは爽快以外の何物でもない。世紀末感が漂う悲惨な日本なのだけど、クロという存在に希望を見いだせるのが嬉しい。
沙羅とクロの関係が深まっていった先にあるもの
予想していなかった展開が含まれていたのも意外だった。なるほど、これが伏線となっていたのかと気づいたのは、ラストを読み終えてからの話。
序盤は、可哀そうな沙羅をクロが守るだけのストーリーでも十分だと思っていたのだけど。それだけでは、読者に対するオチとしては一般的な漫画に過ぎない。
そこで沙羅とクロの関係にも変化が訪れていくのだけど、これは読んでのお楽しみというべきか。もちろん、恋愛関係に発展とか、さすがにそういうのでは無いのでご安心を(苦笑)
胸糞悪いことも多々あるけど、本作のラストであるなら、いいフリを行っていたとしか思えない。読み手に展開を予想させない意外性の面でも評価できる。
戦争の歴史や、敗戦国といった話に知識がないとしんどいところも
ビジュアル的にはバトル描写が強く描かれるので、誰が見てもそれなりに楽しめる。ただ、戦争の歴史といった流れがあって描かれている作品なので、無知すぎると理解が少し遅れるかもしれない。
架空の国を設定し、架空の戦争をストーリーに据えているため、戦争歴史に一定の知識がある方が入り込みやすい。
そう言いつつ、私もあまり歴史に詳しくないので、国と国のあれこれという流れを見た時、「あれ?どういう意味?」と思ったのも事実。
追々読んでいると意味が分かっても来るので、総合的に言えばめっちゃ面白い漫画。そう言えば、本作で初めて押切作品の面白さに触れた気がする。今もだけど、本当にいい漫画を描くよね。