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アダムとイブがおすすめの人
- 透明人間と戦う漫画が読みたい
- ヤクザの出てくる作品を探している
- 奇作、怪作ジャンルが好きな方
透明人間と五感を使った特殊能力を持つヤクザの戦いがテーマ。別に何かのために争う訳でもなく、ヤクザの酒の席に唐突に透明人間がやってくる展開にまず引き込まれた。「え?何がどうなってるの?」みたいな。
普通、透明人間なんて現れようものなら慌てふためくと思うのだが。お互いにすでに幾度となくやりあったかのような緊張感が漂い、スタイリッシュなバトルへと発展。
ヤクザたちの五感フル活用という能力が面白く、台詞もかなりおかしい。読者に取って「ちょっと何言ってるかわかんないっす」的な物まで飛び出したり飽きさせない面白さ。
「アダムとイブ」のストーリー
©アダムとイブ 小学館
衰退していくヤクザ社会を立て直すべく会合に集まったヤクザたち。この会合の場に現れたのが、謎に包まれた透明人間。
ヤクザたちも各々が特殊能力を持っており、五感をフル活用することで常人離れした力を発揮する。ヤクザVS透明人間によるバトル漫画。
脈絡なきまま暴れる透明人間との緊張バトル
山本英夫原作「アダムとイブ」2読了する。大河長篇が多い中、これはこれで完結である。透明人間対異能やくざの争闘、舞台はキャバクラだけ。この難題を池上遼一さんの画力で見せきった。人の顔を脳髄ごとぶちぬく脚力を、モロ描いている凄まじさ。よくわからないが面白いマンガのお手本のようだ。
— 辻 真先 (@mtsujiji) October 21, 2016
どうして透明人間が現れたのか。一体、透明人間の中身は何物なのか。こういった疑問が初っ端から始まる。もっと何か伏線や脈絡でもあれば分かりやすいが、あえて何も知らさないことで緊張感が増すと考えたのか。
透明人間がいきなりヤクザの下っ端をぶっ飛ばすため、理解はできないけれど一瞬で伝わる緊張感に次が気になって仕方がない。
この作品は少しグロもあり、バイオレンスな描写もある。ヤクザの世界に殴り込んで暴れるわけなので、多少はそういう描写も必要なのだろう。
ヒールのかかとで鼻フック・・なんて、見ていて痛々しくて(苦笑)ヤクザ連中の余裕な感じとは裏腹に、読者は話が進むほど緊張すること間違いなし。
私はこの緊張感がキープさせられたまま読めたので、透明人間バトルを「んなことあるかぁ~」とツッコむこともなく楽しめた。
五感が研ぎ澄まされたヤクザたちの戦いぶりが良い
透明人間とヤクザのただのバトル漫画なら、そんなに評価もできなかった。ではなぜ面白いのかと言うと、ヤクザたちの五感フル活用である。
嗅覚や味覚、視覚といった感覚が冴え渡っており、各ヤクザごとに見せ場がある。「上手いな」と思ったのもここで、人間でありながらどうやって透明人間とやり合うかが考えられていた。
武器だとありきたりだし、かと言って普通の人間としてだとバトルにならないし。そこから導き出された、ギリギリ人間の能力としてできることと言えば五感なのかもしれない。
五感の使い方も独特で、変態チックな描写や台詞まで入れているのは、さすが原作・山本英夫氏と言うべきか。そもそも、漫画そのものの方向性が変態的だ(笑)
画力が高いのでふざけた内容もスタイリッシュで素晴らしい
作画は池上遼一氏で、これだけ画力が高いと、文句のつけようが無い。もし下手な漫画家が描いていたら、何というおかしな設定だろうというネタ的な見方で終わっていた気がする。
漫画としてちょうどいい緊迫感を画力で引き出し、そこからスタイリッシュな戦いを展開するので読みやすい。
透明人間を描いているのだけど、まるでそこに本当に存在するかのように、何も描いていないのに何かがいるように見せる技術。画力の高さと、池上氏の劇画調が相まって良い作品に仕上がった。
たった2巻で完結しないといけないのは勿体ない。スタイリッシュにコンパクトにまとめるつもりで制作していたのかもしれないが。ふざけてそうで、全くふざけてないシリアスぶりが最高に面白い。