出典:Amazon
女帝がおすすめの人
- 夜の街が好き
- 裏社会(暴力団・ヤクザ)が好き
- ドラマ的な展開を希望
魅力ある立ち上がり。ざっくり言うと「クソみたいな環境から抜け出して、見下した奴らを見返してやる!」という女の物語。
一人の女子高生が、ホステスから銀座のママになるまでを描いているのだけど、全くこの業界に知識がないまま読んだので面白かった。お酒高いから行く気もしないので・・。
でも上記に書いたおすすめの人に該当するなら、読んでみると良い。実社会で夜の街、特に高級クラブになるほど、どういう人が使っているのかといった知識にもなる。もちろん脚色もあるだろうが、実社会も似たような図式だ。
「女帝」のストーリー
©女帝 芳文社
主人公・立花彩花は熊本で、スナックを営む母と貧しい暮らしをしていた。彩花は高校で優秀な生徒だったが、母が病で倒れたことから店を次ぐ決意をする。
しかし、ボーイフレンドで大手建設会社を営む名家の跡取り息子である杉野謙一の不祥事の濡れ衣を着せられる。
スナックの娘といった偏見を浴び、立花母娘を見下した人々への見返しのため、男たちの上に君臨する女帝になることを決意する。
決してキレイではない社会の裏側を描いている
外から見ると華やかなのが夜の街の特徴。でも、それは表向きで、大金が動くことの多い世界でもあり、ドロドロしている部分があるのも事実。
特に彩花は「女帝」という目標を持っているため、成り上がるために色んな苦労を経験していく。成金おやじ、ヤクザ、政治家といった地位のある人間への接近などだ。
ただし彩花はそこらの女の子とは違う。野心は見せつつも、彼女なりの生き方や正しさの価値観に照らし合わせて物事を見る姿が面白い。
夜の世界なので「金のために」が全面に出てくるのが普通というと偏見だけど。私が本作を面白いと思ったのは、そんな世界において彩花は「人のため」を重視していることだ。
巡り巡って彩花のお金や名声に変わるのだけど、そこまで計算して動いているわけでもない彼女。そこに惹かれて、漫画キャラではあるが私も彩花ファンになった。
彩花の親たちとの絆がドラマチック
女帝は熊本の女の、魂の一冊という感じ。綾香すき!
— はるはる【カステラ🐣美味しい】 (@oxgka) December 6, 2019
本作は彩花が成長していく過程で、側にいてるくれる女性たちが多く登場する。夜の世界で生きていくための「いろは」を教えてくれる女性たちだ。
このような中で、彩花も恩義を感じて、まるで実の親子のような関係に結びついていく。熊本を飛び出しても、若い女の子であることは事実。
そんな時に、心の支えとして色んな女性が登場している。彩花の成長を描く際には、ランクが上にあたる店への移籍があるのだけど、ステップアップとして送り出す店のママたちも素晴らしい。
感謝して別れるの繰り返しではあるが、恩義や絆が垣間見れてドラマがあった。「売れっ子の移籍は、本当は痛い」という本音を出すママもいたりするが、それでも彩花の可能性を見てみたいと思うのだろう。
読者心理としても、もっと上に行って欲しいという純粋な応援心が出てくる。
私的に気になるヘタレの「杉野謙一」
彩花が中心人物で、ヤクザや政治家といったキャラが主要になっている本作。それでも私が好きなキャラは、初登場の頃からずっと出続ける杉野謙一だ。
意思が強く、己の信念に基づいた行動を取る人間が多い中で、彼だけはどうもヘタレなのだ。詳しくは読んでもらうしかないとして、彩花に濡れ衣をかぶせて責任を取らないところが彼のスタート。
また、彩花が好きなのに、身体で迫ってきた他の女にいいように扱われるところ。この男の成長も描かれていくので見どころにはなるが、このヘタレ感は一般人を表しているようにも思う。
誰もが強い想いをずっとキープできるわけではない。特に「女帝」は一つの道を極めようとしている人が描かれているので、読者は現実離れしている話だと捉えがち。
その点で、杉野謙一のヘタレっぷりを出すことで、作品に調和をもたらしている。杉野の成長もぜひ見て欲しい。なかなか成長しないけど、それが本来の人間っぽさとも言えるのだから(笑)
ちなみに本作はkindle アンリミテッドで読めるので、加入している場合はぜひ読まれることをおすすめする。