出典:Amazon
新宿スワンがおすすめの人
- 暴力団やアウトローの抗争好き
- 歌舞伎町など夜の街が好き
- 裏社会のシステムに関心がある
1巻の表紙は、主人公・白鳥龍彦(タツヒコ)なのだけど、未読の人にしてみれば極悪人みたいに見えるてしまう(苦笑)
でも、このタツヒコが真っ直ぐな人間で、女の子たちを夜の街に誘いつつも、ピンチの際には救い出すかっこいい男。最初からスカウトするなって話ではあるが。
面白さは追々説明するが、これだけ面白いアウトロー作品は、なかなかお目にかかれない。目を背けたくなるような展開もあるのだけど、私としては読んで良かった名作である。裏社会を見学するつもりでおすすめしたい。
「新宿スワン」のストーリー
©新宿スワン 講談社
舞台は2000年代初頭の歌舞伎町。パチンコに失敗し落ち込んでいたところを、スカウト会社「バースト」の幹部である真虎に誘われるタツヒコ。
スカウトマンとしてのタツヒコの成長や、周りで起こる人間たちの抗争やトラブルをメインに描かれている。暴力団や裏社会の繋がりがテーマでなので暴力的な描写も多い。
数々のトラブルに対して、タツヒコがぶつかって行くが、序章から終章まで目が離せない展開に悶えるレベル。ちなみに、作者本人が体験したことをフィクションで描いているため、生々しく臨場感のある作品となった。
初期の絵がお世辞にも上手いとは言えないのだが、徐々に上手くなっていく。最初は下手に思うかもしれないが、ストーリーに惹き込まれる気にしなくなるので、心配せずに読んで欲しい。
悪い奴らだけど好きになってしまう仁義ある男たちの存在
本作は基本的に、タツヒコくらいしかいいヤツがいない。裏社会に属し、暴力といった過激な手段も厭わない連中ばかりが描かれるため余計にそう思ってしまう。
しかし、そんな悪たちの中にも、話を読み進めていくと「こいつ好きだな」と思う男が出てくるのも確か。彼らなりの仁義を持っていると言うべきか。
そんな私が好きなのは、武闘派の関玄介。最初は嫌なやつだなと思っていたのだけど、物語で彼がキーマンとなる場面で惚れた。
彼なりに考えて行動している様を見ていると、いけ好かない奴から一気にファンになった。悪いイメージからの立ち上がりなので、ヤンキーが犬を拾うと優しく見える効果なのかもしれないけど(笑)
新宿スワンには、こういったひょんなことから好きになってしまうキャラがいる。他人の感想を見ているとよりそう思う。
登場キャラが多い分だけ、読者も色んなタイプの人間を見るという楽しみが増えていくだろう。
キャバ・風俗・AVなどの背景にある裏事情が怖い
うわ?「新宿スワン」読めば読むほど面白れ?!!登場人物が多くて当時は関係性を理解しないまま読み進めちゃったけど、一気読みすると、こことそこが!とか、あの時のお前が!とか、すげー面白い!キャラの見せ方も凄く上手い。これで連載デビューとか凄い才能だな。 pic.twitter.com/gbuci5wjuC
— チョムマン (@chom_man) June 7, 2020
読んでいると、キャバや風俗、AVってこんなことになるの!?という驚きがある。もちろん、常日頃から起こっている話ではなく、「こういった側面もありますよ」という話なのだろうけど。
売られていく女性が出てきたりもするのだけど、やはり読んでいて怖いと感じざるを得ない。借金したり、ホストに貢ぎすぎたり。彼女らに落ち度はあるが、気がつけばヤバいことに巻き込まれることが伝わる。
中には覚醒剤で中毒にされて抜け出せない子も・・。私は漫画だからこそ過激に描くべきだと思う派なのだけど、正義感の強い人などは胸糞悪さを抱えるシーンもある。
たまに夜の街での出来事が、事件化して報道されるが、報道できないような裏事情が本作で描かれていると思うとやっぱり怖い。読後に作者の実体験もあったと聞いた時、妙な納得感を覚えた。
タツヒコのヒーロー感に救われる
悪いことしか起こらない漫画なのだけど、それでも名作だと思えるのは、タツヒコの醸し出しているヒーロー感が強いからだ。
物語における重要シーンでは、タツヒコが体を張って助けに入る。悪いことばっかりだからこそ、より彼の根底にある人としての優しさを実感できる。
ギラギラした夜の世界で成功を収めたいという欲求は伝わりつつ、だけど誰かを傷つけたり貶めることまではしたくないという彼のポジション。
作中では、タツヒコに救われる子が多く出てくるが、何もせずただ読んでいる私まで救われた気分。ラストまで期待を裏切らないので、追いかけて良かった。
絵も上手くなっていくので、どんどんタツヒコの顔もいい男になっていくんだよな~。