出典:Amazon
ギャングースがおすすめの人
- 少年犯罪がテーマの作品を読みたい
- 社会問題としての犯罪者を見てみたい
- 犯罪者を対象にした窃盗団に興味がある
少年窃盗団という如何にも漫画向けなストーリー。漫画としてデフォルメしつつも、なぜ少年たちは犯罪に手を染めるかといった彼らのバックグラウンドも描いた。
実社会で起こっている問題の延長線上に、本作のような少年犯罪が隠れていることは少なくない。こういった現状に警鐘を鳴らす意味を含めたメッセージが、社会に向けて投げかけられている。
クライムアクション漫画として完成されているため、何も知らずに読んでいると「良い漫画だな」で終わりそうだ。そのため、貧困や格差社会への警告を含めた感想を述べてみたい。
「ギャングース」のストーリー
不遇な人生を送ってきた3人の少年窃盗団。彼らの狙いは、「被害届を出せない犯罪者」を対象にした窃盗、強盗である。
「社会の底辺を生きる少年少女」を長く取材した鈴木大介氏の原案を元に描かれ、社会に対する理解や支援を訴えるメッセージ性も強い。
窃盗や詐欺といった犯罪行為の手口を描きながら、その背景にある裏社会やヤクザといった人間も登場する。漫画としても社会派ドキュメントとしても完成された内容が魅力。
クライムアクションの痛快感
©ギャングース 講談社
タタキと呼ばれる窃盗シーンは痛快。警察に通報できない事情を抱えた犯罪者から金銭を奪うため、言葉は変だが悪い窃盗には見えない。
同時に、入念に下準備されての犯行に及ぶチームワークがカッコいい。各々が得意とすることをフル活用し、カズキ・サイケ・タケオの3人は絶妙の連携を見せる。
1分1秒を争うタタキでは、アクションも必要に応じて使われる。漫画としての完成度が高いため、下準備→決行は読み手も息を飲む。
「無事に成功させろよ」と思わず応援してしまいたくなるのだ。裏を返せば、それだけヤバいことに手を出している査証でもあり、ハラハラ展開に惹きつけられた。
独特の絵による描写で高まる緊張感
「ギャングース」確かに面白い。少年院出身の3人の若者が、窃盗でのし上がっていこうとする姿を描く。底辺の若者ってあまり描かれないが、魅力的に描かれてるし、敵が強力な様子を、リアルに見えるように、想像力を駆使しながら描いて盛り上がる。ラーメン屋、牛丼屋のガラス越しの少年達の描写がいい
— よしぼう (@bafkm) July 21, 2019
かなり絵が独特だ。人間を描きつつも、作者の個性溢れるタッチにより悪そうな奴はとことん悪く描ける。
特にカズキたち窃盗団の前に立ちはだかる敵キャラたちが怖く、目付きと体格から透けて見える冷酷さが半端ない。カズキたち3人も悪そうに見えるが、まだセリフが入るので悪人にまでは見えないが。
本作のセンセーショナルな内容はもちろん、この作者の絵面ありきでないと緊張感が高まらないとも思う。凄惨な描写も出てくるのだけど、この作者が描くと洒落にならない。
ヤクザに半グレ、チャイナマフィアと色んな悪人たちが登場しており、「この中に入り込んだら死ぬな~」というムードが終始漂う。
カズキが手に入れたいモノ
生きるための犯罪として窃盗しているカズキなんだけど、彼の想いが次第に強さを増していく。読者に対して届けと言わんばかりに、なぜタタキをやるのかを訴えてくる。
第1話から言っているがタタキのお金で「国を買う」のだと。何を言っているのか序盤ではわからなかったが、彼の意思は回を増すごとに明確に伝わってきた。国を買うなんて馬鹿げた話だ・・と思えばそれまで。
必死になって盗むのは、自分たちの暮らしを豊かにしたいと言った自己欲求ではない。「次の世代に絶望を与えないため」という、彼なりの救済メッセージに涙しそうになる。
窃盗団のストーリーだけど、見据えている世界は国の行く末。
「生まれながらの格差」なんて言うと、気づけない人には本当に理解されないので難しいところだが。本作を読むことで、新しい世の中の視点に気づく人は間違いなく増えると思う。
巡り巡って自分のためになるなんて高尚なことを言うつもりはないが、制作陣やカズキの伝えたいことが少しでも世間に広がるといいな。
ラストも含めてしっかり出来た作品。カズキの野望はどうなったのか。貧困格差に飲まれた犯罪者たちはどうなってしまうのか。ぜひあなたの目でチェックすべき。