野球

「おおきく振りかぶって」1球1球を繊細に描いた革命的野球マンガ

おおきく振りかぶって

出典:Amazon

総合評価 A (めちゃくちゃ面白い)

おおきく振りかぶってがおすすめの人

  • 内気なピッチャーが活躍する野球漫画が読みたい
  • 球児たちの人間関係や細かい心理描写がみたい
  • 投手と捕手によるバッテリー関係が好き

ひと言でいうと「繊細」な野球漫画。主人公・三橋はピッチャーだが、彼の投げる1球1球の描写を丁寧に描き、同時に心理面も浮かび上がらせている

1球どころか、一瞬で何イニングも飛ぶ野球漫画もあるが、それらが悪いとは言わない。ただ、1打席1打席にフォーカスして細かく読みたい人には好かれる作品。

また、三橋の「自信がない内気なピッチャー」という設定はありえないのだけど(エースとして)、自信の無さをフォローしてくれる仲間との関係が良い。他の仲間も繊細だったり、野球漫画としては斬新。

「おおきく振りかぶって 」のストーリー

©おおきく振りかぶって 講談社

西浦高校に進学した主人公・三橋は、中学時代は祖父の経営する学校でエース投手だった。ただし、チームメイトからは「ヒイキ」と言われ、自信のない自虐的な性格になってしまう。

そんな三橋は、西浦で出会ったキャッチャー・阿部によって才能を引き伸ばされる。女性監督・百枝まりあの元、甲子園優勝を目標にしチーム一丸となって頑張ることに。

野球における解説が細かく、選手たちの心理描写も多く描かれている。スポ根系のガツガツした野球漫画とは一線を引いた作風。

「捕手目線」の面白さが伝わってくる

おおよそ野球漫画はエース目線。もしくは4番を中心とした打者目線が多い。一番目立つところなので、重点的に描けば見せ場も作れるのが理由だろう。

しかし本作は、捕手によるリードが鮮明に描かれており、「自信のない三橋をどうやって成長させるか」が一つのポイントとなる。

キャッチャー・阿部による鋭い考察が光っており、野球の楽しみ方をより面白くさせてくれると言うべきか。プロ野球で活躍した名捕手の話を聞くと面白いがその感覚に近い。

ピッチャーVSバッターではなく、キャッチャーVSバッターみたいな。この過程を経て、三橋が輝き始めるのが何ともたまらない。

ウザすぎるほどの繊細な心理描写が深みに

三橋の自信のなさ、内気な姿はピッチャーとしてはありえない。一般的に、ピッチャーは野球部の中でいちばんセンスがあると言われている。

だからエースで4番なるものが、高校野球ではいくらでもいるわけで・・。もちろん、三橋の環境が「ヒイキ」と言われていた背景はあれど、ここまで卑屈なピッチャーは漫画的である。

しかし、この心理描写は大事なところで、彼らの成長にリンクするのだ。技術的なレベルアップはもちろん、一人の球児としてどうチーム内で立場を作るかが描かれる。

三橋に限らず、他のチームメイトの葛藤表現も上手い。バッテリー関係に悩む阿部や、チーム内のライバル関係でモヤモヤするキャラがいたり。

読んでのお楽しみだが、いい意味でウザすぎるほど心理描写を描くので、結果的に作品そのものに深みが出てくる。野球漫画に革命を起こしたと言われるだけの内容だなと感心させられっぱなし。

試合を丁寧に描き過ぎてテンポは遅め

「好みの問題」と言ってしまえばそれまでだが、試合を丁寧に描いているため物語のテンポとしては遅い。「繊細」と紹介してきたが、配球意図などまで考えながら進むので、早く展開を見たい人は合わないかも。

私は野球経験者でもないため、逆に理論や考え方も含めて勉強になって楽しい。まあ・・パワプロの配球に活かす程度かな(笑)

もし途中まで読んで「続きが読めないこと」でストレスを溜めやすい人は、完結まで待って読むのもアリだろう。

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