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刑務所でマンガを教えています。がおすすめの人
- 刑務所で作業する受刑者を扱った作品が読みたい
- 漫画の背景がどのように描かれるか興味のある人
- 内容の面白さより実録ノンフィクションが重要な人
ジャケ買い。刑務所で漫画を教えるとか、失礼ながら危ないネタなのではないかと思ったからだ。わかるかな・・ひと昔前にTV放送されてた「ガチンコ」的な流れなのかなと。
「漫画なんか書いてられっかよ!」という受刑者に、体当たりしていく漫画家との人間ドキュメンタリーみたいな。そういう流れを期待していた。
結論から言うとノンフィクションなので、そんな派手なシーンはない。マンガ制作に興味がない人には勧めにくいが、作中に出てくる活動は社会貢献の意味合いで評価したい。
「刑務所でマンガを教えています。」のストーリー
©刑務所でマンガを教えています。 KADOKAWA
苑場凌氏と受刑者による共作漫画が完成するまでの実話ノンフィクション。苑場氏が仕事として立ち上げたプロジェクトの一環として、受刑者に漫画背景の描き方を教える内容。
受刑者の成長や、苑場氏がやってきた仕事などと合わせて作品化。共作漫画は、「浅見光彦~ミステリースペシャル~」というコンビニなどに置かれる漫画。
漫画背景に関する技術なども含まれており、漫画家を目指したい人にも向いた作風。
受刑者の未来にスポットを当てている
社会から落ちぶれた人が、再び社会に戻るのは大変だ。普通に生活している一般市民でも、一定のレールから転げ落ちると仕事が見つからない現代。
ましてや犯罪をやってしまった人であれば、再雇用されるまでの道が見えにくくなる。そんな受刑者らの役に立てるならと、自己利益に走ること無く技術指導を引き受けた作者の人間性が素晴らしい。
実際に作中にも、将来的な不安を抱えている受刑者が描かれているが、そういった人たちに漫画を通して学ばせる意味は大きいのだと思う。
背景を描くのは作業の一環だが、それで将来食べられるわけでもない。ただ、その作業に取り組む姿勢や頑張った結果によって自信を与えられるのは良いこと。
「自信」がないと人は支えを失う。そんな彼ら受刑者の未来にスポットを当て、少しでもフォローできればという流れが見える作品だ。
ノンフィクションゆえ、ありのままで書いた内容で面白みはないけれど・・。しかし、社会復帰しなければいけない人たちへのサポート活動という目でみると、非常に価値のあることを作者は行った。
背景画の出来栄えがすごい
苑場凌さん「刑務所でマンガを教えています。」
ジャケ買いで大当たり!ストーリーとしてすごくいい話でもあり、アシスタント経験のない私にはためになる背景の絵のコツも詰まってました。影線とかフリー線とか知らなかったし。
センター生(受刑者)チーフアシスタントが爆誕するとか色々すごい。 pic.twitter.com/WtD2B7IGfo
— カマンベール??はる坊 (@camembertharubo) November 26, 2018
作中、受刑者たちの描いた背景が出てくるが、正直なところ本当に素人が受刑期間で学んで出来たことなのかという気持ちになる。
つまり、それだけ上手い。詳しくは作品を見てもらうとして、本作には一定の漫画理論も実際に掲載されている。
何事も基礎を押さえないとできないことが多いが、まさにこの基礎を受刑者は作者に教わって上達した。もちろん、基礎が分かっても丁寧に仕上げないとダメなのだが・・。
そう思うと「犯罪者だから適当にやってるんだろう」みたいな偏見も消えていくというか。また、作品をダウンロードして他の漫画家にも使えるようにしていく流れもある。
達成感を実際に感じている受刑者たちだが、素人目にもすごいことをやっていて羨ましい。さすがに受刑者にはなりたくないけど、作者と受刑者のこれからの活躍に期待。