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3月のライオンがおすすめな人
- 将棋に興味がある
- 人間ドラマが好き
- 白熱の対局シーン
ここまで3月のライオンがウケ続ける理由は、「愛」と「優しさ」の表現が素晴らしいからだ。文句のつけようのない人間ドラマやストーリー、個性溢れるキャラたちの化学反応が素晴らしい。
将棋に興味がある人はもちろん、全く将棋をスルーして読んだとしてもハマってしまう面白さ。漫画のレベルは上がり続けているが、本作は近代漫画の結晶とも言えるほどの出来栄え。
失礼ながら「漫画でここまで表現できるのか」と思ってしまったほどだ。男女問わず万人ウケする作品が少ない中、3月のライオンは自信を持っておすすめしたい。
「3月のライオン」が近代漫画の結晶である理由
©3月のライオン 白泉社
話は逸れるが「近代漫画の結晶」とは、競走馬のディープインパクトが3冠を達成したときの実況から取っている。※ゴール時に「世界のホースマンよ見てくれ。日本近代競馬の結晶だ」が馬場鉄志によって叫ばれたことで有名。
過去の日本競馬との決別、新しい日本競馬を象徴するフレーズとして使われた。3月のライオンもまた、これまでの漫画のイメージを覆していく作品になっている。
「子供が読むもの」というイメージは、本作のような作品が変えていくのだろう。なぜそこまでハイレベルなのか。近代漫画の結晶である理由を述べたい。
絵柄からは想像できないほど深い人間ドラマに触れていく
『3月のライオン』15巻も素晴らしかった。最近毎巻泣いてるなぁ。もはや「大人の道徳の教科書」なんじゃないかな。そして好きな人の話を聞いてみたい。たぶん刺さるポイントが皆違うと思うから。「自分の弱さから目をそらすヤツがするのがウサ晴らし 弱さを見つめる人間がするのが立て直し」。
— 平山高敏 (@t_hirayama0227) December 27, 2019
まず作者は少女漫画で有名になった漫画家である。個人的に、絵柄はさほど好きでないというか。少女漫画を読まないので、ふわふわしたような、そんな特徴を受け止めきれてない私もいる。
ただ、この絵柄からは想像できないほどに「ドラマ」が作中で展開されていく。主人公・桐山が幼き日に両親を失ってから生きていく中で出会う苦悩。
桐山が世話になる川本家の事情。将棋の世界を生きるためにがむしゃらに食らいつく棋士たち。また彼らをサポートする教師や仲間。
「これ本当に原作は漫画ですか?」と思わず聞いてしまいそうになるほど、よく出来た人間ドラマ作品なのだ。
みんな平気な顔で、当たり前のように生きている。だけど、個人個人が抱える悩みや生きづらさ。葛藤など描写がとても鋭く、人として考えさせられる内容に感服するばかり。
ツイートを掲載しているがこの意見に同意。道徳の教科書として、学校で配布されてもいいと思っている。正解のない答えを模索していくことのすごさを感じた。
いじめ問題と解決方法
川本家の次女・ひなたはイジメに遭う。このイジメはリアルで、どの学校でも実際に起こっていてもおかしくない。いや、起こっているであろうと思わせるリアリティで表現している。
解決するためにどうすればいいのか。イジメ問題に答えは無く、泣き寝入りだったり、加害者をひたすら怒って事を収めるのが精一杯ではないだろうか。
ただ、本作はそんなイジメ問題に対して、「考えさせられる言葉」が投げかけられる。ネタバレになるので詳しい内容は書かないけれど・・。邪道だが5巻から読んで、この問題について考えるのもありだろう。
イジメ問題は、誰かに頼ることだったり、また戦うことだったり。すごくシビアで難しい対処が必要だと思うが、個人的には本作の流れは一つのケースとして学校現場で広まるといいのではと思う。
この問題だけでずっと語れるほど、密度のあるストーリー展開だ。
対局の表現シーンは見どころしかない
将棋漫画なので、自然と対局シーンも組まれている。ただこの対局もよく考えられていて、勝負に向かう上で負けられない棋士たちの思惑や、生き様といった背景描写がいい。
この勝負の場面が面白く、人と人が盤上で自分の人生を賭けて戦うのだ。主には桐山にたちはだかるライバルたちの話になるが、将棋の内容よりも人物にフォーカスして戦うため読み応えに繋がっている。
盤上に作り出す世界観や、その人にしか指せない将棋を数話に分けて描くが、パターンになっているのに全く飽きない。そこには、「真剣勝負」をいかに表現するかという工夫があるからだ。
1巻ごとに読みごたえと感動を与えてくれる本作に感謝。