人間ドラマ

「ママゴト」子どもの純粋無垢な姿はどんな大人も明るく照らす

ママゴト

出典:Amazon

総合評価 B (ふつうに面白い)

ママゴトがおすすめの人

  • 疑似親子を描いた作品が好き
  • 底辺社会を描いた作品を探している
  • 感動したい、泣きたい気分の人

大人たちは「子供の面倒をみる」というが、決して一方的に奉仕しているとは言えない。子供と接することで得られる気づきや学びがある。

本作の主人公・映子も、そんな子供から教わった一人。子供を不慮の事故で亡くしてトラウマを抱えていたが、知り合いの子供との関わりによって癒やしていく。

私自身も幼い姪っ子がいるが、少し関わるだけで沈んだ気持ちも明るくなる。子供の持つ純粋無垢な姿は本当に大きい。本作は擬似親子の関係を描くが、何とも言えない感動がある。

「ママゴト」のストーリー

©ママゴト KADOKAWA

主人公・恩地映子は、スナックを一人で切り盛りしているママ。そんな映子の元に、風俗店で働いていた頃の元同僚・滋子が子供・タイジを連れてやってくる。

映子は滋子から半ば強引にタイジを預けられ途方にくれる。映子は昔、我が子を不慮の事故で失っており子供に対するトラウマがあった。

そんな映子とタイジの、擬似親子とも言える生活が始まる。

バックグラウンドにある底辺社会の残酷さ

映子とタイジの擬似親子ドラマを描く作品だが、物語のバックグラウンドにある底辺社会の残酷さが肝になる。

映子は風俗店で働きながら妊娠。誰の子かわからないが出産。生んでみたが、実際に育てていくにはハードルがあった。結果的に映子の子は、炎天下の車内で亡くなる。

「福祉制度や支援施設に頼る」という選択肢を映子は持たず、一人の力でどうにかしようとした結果というのがまた重い。この「福祉の手が届かない底辺社会」に触れていることにも本作は意味がある。

警察から「わざと殺したんでしょ」と詰められる映子だが、二重三重にムチを打たれていることが見ていて辛かった。いい具合に警察サイドの理解がないのがまたリアルだ。

タイジによってトラウマが癒やされていく映子

5才児のタイジだが、小太りの男の子でビジュアルが可愛らしい。ただ子供であるが故に敏感で、実の母・滋子に捨てられていることを察知。

すぐさま、「いいこにする」という保守的な態度を見せてくる。子供ながらに生きていくには、いい子にせざるを得ないということを本能的に嗅ぎ取ったことが伺える。

ただし、映子も子供を亡くしたトラウマが重なって、タイジとの関わり方にも困惑気味。私を含めて、普通に子供が好きな人でも、いきなり置いていかれたら厳しい気持ちは分かる。

ここからタイジの言動に振り回されつつも、共同生活することで映子のトラウマも癒やされるのは読者目線でも嬉しい。もちろん一筋縄では行かない展開もあるのが本作の面白み。

様々な登場人物も現れ、映子&タイジの関係だけで物語が進まないところも、ストーリーに幅をもたせており非常に上手い。

標準語ではなく「方言」で描く意味

ちなみに、本作は方言を使っているので、読みにくいと感じる人がいるかもしれないことだけは伝えておこう。作者の松田氏は、広島県福山で育っており、その影響もあると思われる。

実際、標準語はあくまで標準語。日本の大半の人は方言を何らかの形で使っているわけで、本作のように生活を描くなら言葉も「素」に近いほうが良い。

と言っても、方言を他県の人が聞いて本気で分からないと言われるところなんて、沖縄くらいじゃないかな。方言による「味」も含めて読んでいくと、感動が何倍にも膨れ上がるだろう

ママゴト 1 (ビームコミックス)

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