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ちひろがおすすめの人
- 風俗嬢の物語が読みたい
- 人間の生き様を描いた作品が好き
- 仕事や人生に自信を持てない人
何きっかけだっただろうか。何気なく作品を知った際に、「風俗嬢」の文字が目に入ったように思う。「エロはどうかな」みたいな雑な下心で読んだが、あっという間に主人公・ちひろの魅力に気づいた。
風俗という少し後ろめたさや、公に口にしづらい部分のある世界において、ちひろはプロとして働いている。達観した価値観を持ち、どこか哲学的な物の見方をしながら。
カッコいい女性の生き様が描かれており、自信を持って生きている彼女。私は自分に自信がなく、ちひろとは真逆の生き方をしているからだろうか。いつのまにか、下心で読み始めたことを忘れるほど没頭して読んだ。
「ちひろ」のストーリー
©ちひろ 秋田書店
主人公・ちひろは、ファッションヘルス「ぷちブル」で働く女性。日々訪れる男性客を相手に売れっ子として勤務。ちひろは仕事に対して高いプロ意識を持っており、日々サービスをこなす。
そんな彼女の周りにいる、男性客や同僚に親友。またスタッフたちとの関係性を軸にした作品。
彼女のアイデンティティや価値観、哲学的な考えにはブレがなく、「ちひろ」という一人の女性の生き様が描かれている。
自由を求める女性の人生哲学ドラマ
TLで不意に流れてきて、読み返したくなった。安田 弘之さんの「ちひろ」 風俗嬢のちひろが主人公の漫画なんだけど、ちひろの壊れ方というか強さというか、とにかく「こんなヒロイン誰も描けねえよ…」という唯一無二のキャラクターしてるんですよ!上手く説明できない脳みそが憎い!とにかく傑作!
— 凸ノ高秀 (@totsuno) August 23, 2012
ちひろは常に自由だ。風俗というと、どこか後ろ暗さのあるアンダーグラウンドな世界観を想起させがち。だが風俗は、ちひろに取って自由を手にするための、踏み台のような位置とも言える。
人は通常どういったルートで人生を歩むかと考えるが、ちひろは感性の赴くまま。彼女が信じるポリシーに沿った生き方をしている。
周囲の人間との関わり方も、達観した感じでどこか哲学的な思考も描かれていたり。彼女の力強い生き方は、結果的に自由に向かっているんだなと思わされる説得力に繋がる。
漫画の内容については、ちひろがあの場面でこうしたとか。あれはどういう意味だとか。考察するというより、読んだ人が何かを感じたり考えるきっかけになれば良い話が多い。
一人の女性の生き方。そこから勇気をもらえたり、励まされる人がいれば十分。ちひろなら、きっとそう言ってくれるんだろう。そう思わせるほどの不思議なドラマ作品。
「風俗」が舞台になるもエロ作品にならない
ちひろは風俗で働いているため、接客サービスのシーンも描かれる。おっさんとのキスや、プレイ内容が生々しく描かれるため、エロなのか?と思う人もいるかもしれない。
しかし、そこには風俗嬢・ちひろを全面に出す作品としての意味合いがある。濁した描写にすると、彼女の日常がボカされてしまうというか。
男性客に向き合う姿や、仕事における苦労が分かることで「ちひろ」という女性が実在するかのような。そんな説得力を持たせる表現法だ。
文字を読まずにパラパラ進めると、絵の下手なエロ漫画に思う人もいるかもだが(汗)エロ作品にならないよう、ちひろは仕事を通しても読者に伝えてくる物があるのでご安心を。
※「ちひろさん」ではなく「ちひろ」を先に読め※
注意点としては、2013年に本作の続編として始まった「ちひろさん」を先に読まないこと。理由は「ちひろさん」では、ちひろが弁当屋で働くことから始まるため。
スタートが風俗嬢の世界観と、弁当屋では違いすぎるため、作品イメージそのものに関わる恐れがある。すでに、弁当屋ちひろを読んで、本作を読み「違う」と感じた人もいるようだが・・。
あくまで、ちひろは風俗が原点。ここから派生した彼女の言葉や哲学思考が醍醐味なので、もう読んでしまった人は仕方がないとして。まずは、本作を先に読むべきだ。