人間ドラマ

「ちひろ」風俗嬢の漫画というより人生における哲学書だった

ちひろ

出典:Amazon

総合評価 A (めちゃくちゃ面白い)

ちひろがおすすめの人

  • 風俗嬢の物語が読みたい
  • 人間の生き様を描いた作品が好き
  • 仕事や人生に自信を持てない人

何きっかけだっただろうか。何気なく作品を知った際に、「風俗嬢」の文字が目に入ったように思う。「エロはどうかな」みたいな雑な下心で読んだが、あっという間に主人公・ちひろの魅力に気づいた。

風俗という少し後ろめたさや、公に口にしづらい部分のある世界において、ちひろはプロとして働いている。達観した価値観を持ち、どこか哲学的な物の見方をしながら

カッコいい女性の生き様が描かれており、自信を持って生きている彼女。私は自分に自信がなく、ちひろとは真逆の生き方をしているからだろうか。いつのまにか、下心で読み始めたことを忘れるほど没頭して読んだ。

「ちひろ」のストーリー

©ちひろ 秋田書店

主人公・ちひろは、ファッションヘルス「ぷちブル」で働く女性。日々訪れる男性客を相手に売れっ子として勤務。ちひろは仕事に対して高いプロ意識を持っており、日々サービスをこなす。

そんな彼女の周りにいる、男性客や同僚に親友。またスタッフたちとの関係性を軸にした作品。

彼女のアイデンティティや価値観、哲学的な考えにはブレがなく、「ちひろ」という一人の女性の生き様が描かれている。

自由を求める女性の人生哲学ドラマ

ちひろは常に自由だ。風俗というと、どこか後ろ暗さのあるアンダーグラウンドな世界観を想起させがち。だが風俗は、ちひろに取って自由を手にするための、踏み台のような位置とも言える。

人は通常どういったルートで人生を歩むかと考えるが、ちひろは感性の赴くまま。彼女が信じるポリシーに沿った生き方をしている。

周囲の人間との関わり方も、達観した感じでどこか哲学的な思考も描かれていたり。彼女の力強い生き方は、結果的に自由に向かっているんだなと思わされる説得力に繋がる

漫画の内容については、ちひろがあの場面でこうしたとか。あれはどういう意味だとか。考察するというより、読んだ人が何かを感じたり考えるきっかけになれば良い話が多い。

一人の女性の生き方。そこから勇気をもらえたり、励まされる人がいれば十分。ちひろなら、きっとそう言ってくれるんだろう。そう思わせるほどの不思議なドラマ作品。

「風俗」が舞台になるもエロ作品にならない

ちひろは風俗で働いているため、接客サービスのシーンも描かれる。おっさんとのキスや、プレイ内容が生々しく描かれるため、エロなのか?と思う人もいるかもしれない。

しかし、そこには風俗嬢・ちひろを全面に出す作品としての意味合いがある。濁した描写にすると、彼女の日常がボカされてしまうというか。

男性客に向き合う姿や、仕事における苦労が分かることで「ちひろ」という女性が実在するかのような。そんな説得力を持たせる表現法だ。

文字を読まずにパラパラ進めると、絵の下手なエロ漫画に思う人もいるかもだが(汗)エロ作品にならないよう、ちひろは仕事を通しても読者に伝えてくる物があるのでご安心を

※「ちひろさん」ではなく「ちひろ」を先に読め※

注意点としては、2013年に本作の続編として始まった「ちひろさん」を先に読まないこと。理由は「ちひろさん」では、ちひろが弁当屋で働くことから始まるため。

スタートが風俗嬢の世界観と、弁当屋では違いすぎるため、作品イメージそのものに関わる恐れがある。すでに、弁当屋ちひろを読んで、本作を読み「違う」と感じた人もいるようだが・・。

あくまで、ちひろは風俗が原点。ここから派生した彼女の言葉や哲学思考が醍醐味なので、もう読んでしまった人は仕方がないとして。まずは、本作を先に読むべきだ。

ちひろ 上

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