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夢印がおすすめの人
- おそ松くんの「イヤミ」を知っている
- 壮大な計画による侵入&窃盗モノを読みたい
- ドラマや映画のようなスピーディー展開を求める
「ルーヴル美術館と浦沢直樹氏の共同プロジェクト」で生まれた作品。ただ、共同プロジェクトが誘い文句として強烈過ぎ、作品としてのハードルは上がりまくった。
ルーヴルが漫画を第9の芸術として認めたことで企画が進行したとのこと。漫画ファンに言わせてもらうと、「そもそも漫画も芸術だけどな!」と言いたい気持ちは置いておく(苦笑)
内容は「ルーヴル美術館から美術品を盗む」という感じなのだけど、読んでみて驚いた。スピーディーに展開が運びつつも、だからと言って無理のないストーリーと伏線が。かなり面白い!
「夢印」のストーリー
莫大な借金を背負った父とその娘。そんな二人の前に現れたカラスに導かれ、辿り着いた館にいたのは胡散臭い男。
胡散臭い男から借金返済のために、フランスのルーヴル美術館から名画を盗み出すことを提案される。父娘は窮地を乗り越えるため、藁にもすがる思いで話に乗ることに。
窃盗計画を遂行していく過程で見えてくる人の繋がりやドラマが待っている。
おそ松くんの「イヤミ」を知っている前提で
©夢印 小学館
キャラよりストーリーの漫画。共同プロジェクトが先行しすぎて話題にされやすいが、この話を描けるのであれば、仮に共同(ルーヴルテーマ)で無くとも面白かったはず。
それだけストーリーの出来た漫画なので、ぜひとも読んでもらいたい。ただ一つ気になるのは、作中に出てくるキャラの一人が、どう見ても「おそ松くんのイヤミ」ということ。
フランスを舞台にするので、(お)フランスと言えばイヤミだったようだ。主役となっている父娘はふつうの人たちで、そこまでキャラが強いわけでもないのに、イヤミは目立つ。
そのため、イヤミを知っているかいないかで、若干物語の面白さは変わってくると感じた。全く知らなくても面白いけど、パロディ的な意図を楽しむなら、イヤミは前提として知っておく方が望ましい。
伏線からラストに至るまでの窃盗劇の面白さ
「夢印」浦沢直樹×ルーヴルと聞いてミステリアスな物を想像したけど人間ドラマを感じる作品だった。掴みきれ無い手探りの感覚で読み進めたけど最後あれよあれよと風呂敷が畳まれていく様な感覚が爽快。それでいて胸が熱くなりつつやっぱりどこかミステリアス。とても面白かったです!おすすめ pic.twitter.com/rIFkyHodaJ
— カサミカ?漫画垢 (@mika08bit) August 23, 2018
普通のおじさんと子供が盗み出すというストーリーにしたのは正解だ。怪盗キャラなどの窃盗劇になると、どうしてもリアリティから外れた視点で見るため冷めることもある。
それが、父娘というどこにでもいるような親子の、可能な範囲で頑張ってみるという展開にハラハラさせられる。
ただ盗むだけでは漫画として面白みもないが、話全体を通して伏線を張り巡らせ、読者も一緒になって盗みに参加している気分に。
1巻で終わるけれど、内容はテンポよく凝縮して描かれており、決して退屈がない。スピーディーな展開で、ひとつの映画を観終えたような読後感。
しっかりドラマ要素も入れてくるので、読み進めていく内に、「こりゃすげえな」という感動を抱くこと間違いなし。
背表紙に凝った工夫が!?
背表紙に工夫を凝らしている。ルーヴル美術館とのコラボもあってか、パッケージにもおしゃれを施そうという意図があったのだろうか。
真相はわからないが、こういった表紙を使った遊びが見られるのは紙本のいいところ。
2020年7月現在のところ電子書籍では発売されていない。読んだ際には、ぜひカバーを外しチェックしていただければと思う。