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いぬやしきがおすすめの人
- 寂しい初老男性がヒーローに変わる姿を見たい
- 正義と悪の対比が分かりやすい作品を読みたい
- 残酷、残虐な描写があっても問題ない
展開的には非常にわかりやすい。とある出来事でロボット化した初老男性が、その能力を世のため人のために使うという話。ありきたりな話ではあるけれど、作者の絵が上手いことで新しさを感じた。
中途半端な画力だと本作は成立しにくいというべきか。まるで大作SF映画を見ているような、壮大なビジュアルによる迫力に圧倒される。
最初読んだ時は、家族に雑に扱われる中年親父の可哀そうな話かなと思ったものだけど。あっという間にヒーローとして活躍していくテンポの良さからスムーズに惹き込まれた。
「いぬやしき」のストーリー
©いぬやしき 講談社
主人公は犬屋敷壱郎。社会から疎外された生活を送るサラリーマン。寂しいおっさんとして生きているが、胃がん診断により余命3ヶ月を宣言される。
そんな中、犬の散歩中に宇宙人による事故に巻き込まれ死亡。巻き込まれたのは、犬屋敷と高校生・獅子神の二人。
この事故隠蔽を宇宙人が行ったことから、二人は体を機械にされサイボーグ化することになる。機械化された体を使う二人は、真逆の道に進むことになる。
犬屋敷の優しい人柄と、扱われ方のギャップに戸惑う
「いぬやしき」読んだ。主人公が変化球だけど、中身は勧善懲悪の正統派エンタメでめっさおもろい。
— かわのゆうき (@ykawano) July 3, 2014
初老男性の犬屋敷がとても優しく、機械化しても世のため人のために能力を使おうとする姿勢が素晴らしい。
物語としては、犬屋敷はどこにいても邪険に扱われており、人類に対する復讐に能力を使ってもおかしくないのだけど。一貫して優しい人であり、能力に過信することもない。
感情移入というか、私自身も社会的には影の部分を生きている人間なので、犬屋敷のできた人格に戸惑ってしまう。
ビジュアル的にもぷるぷる震えているなど、かなり作者も悲壮感漂う、弱々しい人物を狙って描いているのは分かるのだけど。こんな良い人が、雑に扱われる社会が実際にあるんだよなとしみじみ。
SF大作映画のようで、実はヒューマンドラマ
作者の絵がとにかく上手いので、機械化された人間によるSF大作映画感がすごい。ただ、物語全体を読んで残るのは、犬屋敷という人物のドラマだったなということ。
ビジュアルがすごく美しい漫画なので、作中の戦闘シーンが見どころになるのは当然の話として。
犬屋敷が機械化してから、一体彼が何のために力を使っていくのかを見ていくと、そこに彼らしいドラマがあった。
冴えないサラリーマンなので、機械化して無敵の力を手に入れたらワンチャン何かとんでもないことをやってみたい気持ちも芽生えただろうに。
ただただ絵が上手いで終わらせないためのドラマもしっかりしていて面白かった。
人を殺す描写はエグめ
ちなみに、人を殺すシーンも出てくるので不快に感じる人がいるかもしれない。絵が上手いので、この殺しのシーンもはっきり描写してしまう。
サイボーグ化した能力を、悪い方向に使う獅子神がいるので、避けて通れないのだけど。作品コンセプトとして、犬屋敷の素晴らしい人格の対比表現になったとも言える。
一応、ロボット化する前後の考え方や思考はそのまま残っている設定なのだけど。獅子神は心まで機械になってしまったのかな?と思う部分もあった。一応、胸糞を避けたい人に向けた注意喚起。