エッセイ・日常

漫画家・押切蓮介の光と影&影「猫背を伸ばして」

猫背を伸ばして

出典:Amazon

総合評価 A (めちゃくちゃ面白い)

猫背を伸ばしてがおすすめの人

  • 押切蓮介ファンの人
  • 漫画家を目指しているけど上手く行かない人
  • 昭和的なカーチャンが好きな人

いち漫画家が、売れない時代をどのように過ごしていたのかをエッセイ化したのが本作。個人的に大好きな押切蓮介氏とあらば、読まない理由が見当たらなかった。

押切エッセイと言えば少年時代を描いた「ピコピコ少年」も有名だが。本作は漫画家として活動を始めた青年期を描いている。

押切氏のお母さんも登場するのだけど、これが昭和的なカーチャン像を彷彿とさせ、例外なく私の母とも被る存在で笑った。なんだか他所のお母さんだけど、とても身近に感じてしまう。

「猫背を伸ばして」のストーリー

©猫背を伸ばして ほるぷ出版

漫画家・押切蓮介氏のエッセイ作品。漫画家を目指すべく頑張る作者だが、上手く行かない日々を過ごしている様子が描かれる。売れっ子には光もあれば影もあるが、影をテーマに構成した。

作者の母との生活や、日常で起こった観察記。バイトの話や、友人とのエピソードなど豊富な内容。学生時代の暴力教師や、職場での嫌がらせされた経験など出し惜しみない。

「将来への不安」という漫画家の実態

漫画を描くにあたって、「1作目から連載が決まりトントン拍子で売れました」なんてケースは無い。いくつも描いてそれでもボツを食らって。その先に連載、アンケートによる順位競争の流れがある。

そんな厳しい世界における苦しみを、作者の実体験で描いているのが本作。母親と同居しつつ漫画に取り組む姿が、より生々しさを表現していて面白い。

売れない不安。仮に売れても、安定収入があるわけではない不安。だけど、まともに働いてお金を稼ぐのは社会不適合者なので・・と避けたい押切氏。

逃げ道の無さに、私も漫画は描いていないけれど共感するものが多かった。実際、私も社会不適合者なので(汗)押切氏の鬱屈した日々は、売れない漫画家の実態を上手く描いていると言える。

作中には、清野とおる氏も出てくるなど、漫画家仲間のことも描いていたり。押切氏が好きな人は、清野氏の描く作品も好きな人が多いのではないかな。こういうエピソードは大好物なので、もっと描いて欲しい(笑)

脱力と緊張で光らせる秀逸センス

基本的に鬱屈した暗い日々を描いているため、作者がイキイキとしている様子が少ない。脱力してやる気もない状態で、それでも漫画に向き合わないといけなくて。

そんな脱力調で進んでいるので、シュールな笑いを届ける作風かと思いきや。押切氏の得意なホラー&バイオレンスもしっかり描いていて大興奮

特に暴力教師のエピソード。令和の今は完全にアウティングな話だが、この暴力教師が登場したことで緊張感UP。暴力被害を秀逸センスでネタにしたため忘れられなくなる。

男子だけでなく女子にも暴力とか。なかなかお目にかかれない暴力教師っぷりに驚愕した。

「昭和的カーチャン」の言葉が染みる

漫画家として活動している作者だが、当時は母子で生活しているためどうしてもカーチャンに絡まれる。「たまには外に出て運動しろ」なんて言われるけど、いかにも昭和的なお母さんで。

実は私もこういうことはよく言われていた(笑)いくつになっても母親にとって子供は子供で、母として健康管理に気を使っているんじゃないかなと読んでいて思った。

押切氏においては漫画家として連載もあり忙しい。それにも関わらず「漫画ばかり描いてないで運動」と言われてて(笑)どこの家も同じなのかなと。昭和的カーチャン像を噛み締めながら読んだ。

ちなみに、買うなら「新装版」にすべき。おまけで読める部分が増えているので。仮に古本屋で旧版を見つけても避けて、思いっきり新装版で楽しむべし。

猫背を伸ばして 新装版 (メテオCOMICS)

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