出典:Amazon
本作がおすすめの人
- 妄想や想像によるシュールな遊びが好きな人
- 居酒屋やスナックに通っているor通いたい人
- 奇抜スタイルな対人コミュニケーション術を学びたい
漫画家・清野とおる氏の、取材方法や日常生活、またスナックなど社交場における立ち回りをエッセイ化した作品。シュールな視点を活かすことで、何気ない日常で笑いを取っている。
当人はコミュニケーションが苦手なタイプと言っているが、作中で見られる対人スキルはもはや真逆。やや奇抜なスタイルは否めないが、コミュ力を磨く漫画と言っても違和感なし。
クスクス笑ってしまうと言うべきか。「いい年した男がこんなことをしているなんてw」と思わずにいられない。清野氏のファンで無くとも、本作を読むと彼に興味が出てくるだろう。
「Love & Peace 清野とおるのフツウの日々」のストーリー
©Love & Peace 清野とおるのフツウの日々 白泉社
漫画家・清野とおる氏が自身の生活をエッセイ化。漫画家として、いち個人としてどんな視点で日常を見ているのかを面白おかしくシュールに描いた。
かなり毒づいた表現も目立ち、人間なら誰しもが持っているであろう「悪い心」まで惜しみなく出している。絵面も悪い顔を出したりと、表と裏の使い分けを上手く取り入れた。
1巻と2巻でサブタイトルが異なるが、1巻は清野氏自身のことが多い。逆に2巻はスナックや居酒屋など取材現場での様子を主に描いている。
清野氏のシュールな日常と作画のマッチング力
「悪い清野」を上手く使っている。通常のエッセイ漫画は、よくも悪くも日常を漫画的にキレイに収めようとしがち。
ところが清野氏は、「今後の仕事に支障が出てしまうのではないか」と、読者の私が心配してしまうほど自分を曝け出している。特に編集者や取材対象者に、どういうことを考えながら接しているかなど。
「こういう人間にはこうやって対処だ」といった、あまり口にしないであろう人間の本音部分をダークに。そして面白おかしく漫画に落とし込んでいる。
このダークかつシュールな笑いを生んでいるのは、清野氏の作画力にあると言っても過言ではない。「しめしめw」などのしたり顔は、作品とのマッチング力が強すぎて笑った(笑)
エピソードチョイスに漫画家としてのセンスを感じざるを得ない
人間、普通に生きていてもそう面白いことはない。エッセイも同じで、いかに日常を面白おかしく切り取れるかが重要だ。そういった意味で、エピソードチョイスはセンスを問われる。
そんなエピソードだが、清野氏はセンスの塊だと思った。狙ってしまうと「これはやりすぎ」と捉えられるし、逆に押さえて表現すると退屈になる。
そこで手法として取り入れられているのは、「普通の人ならそんなにやらないこと」だ。深夜に猫にまたたびで職質とか、自分の子供の頃の障害を出してきたり。
あくまで日常エッセイの体を取りつつ、だけど日常的に他の人はそう体験できない話を置いた。これによって、漫画より漫画家・清野を好きになってしまう人も多くいることだろう。
気遣い、気配り名人の作法
清野とおるさんの新刊「Love&Peace」2巻がいつにも増して面白い!
居酒屋主人、スナックママ&常連客と距離を詰める方法。
それ系の作法本は多々あるけど今まで誰も書いてない、こまいことが沢山書かれててさすがの一言。特にスナックの一連が最高。スナックほぼ行ったことないけど行きたくなった。— 上野耕一郎 (@uenokou) August 10, 2018
2巻の居酒屋&スナック攻略も笑えた。そして読み終えて思ったのは、居酒屋とか面白そうだなと感じたことだ。私は全く居酒屋に行かず、普段から酒も飲まないのに。
理由として、酒場における店主やお客さんに対する清野氏の気遣いが描かれていて、この作法を実践したくなったから。
清野氏はとても気配り名人。居酒屋やスナックにおける、上質な客になりきっている。そのため「デキる俺感」を実感しながら遊べており、周りに認められ自己肯定感も高まっていると思われる。
「そんな名人になれるなら自分も・・」と読者の中には思う人もいるはず。私もその一人(笑)「飲み屋で良い客になる」という視点で楽しんでいることを漫画化。そんな清野氏の良質なセンスが輝いたエッセイだ。