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「ブルーピリオド」答えのない問題にぶち当たっている全ての人へ

ブルーピリオド

出典:Amazon

総合評価 B (ふつうに面白い)

ブルーピリオドがおすすめの人

  • 美大や美術分野に興味がある
  • 苦悩や葛藤に向き合う作品が読みたい
  • ジェンダー問題に関心がある

「他者評価」に左右される分野は本当に厳しい。本作のテーマである美術を例にすると「こう描けば正解」といった答えが無い。ゆえに超えられない壁にぶち当たってしまうのだ。

しかし本作は、この超えられない壁を含めた「人の内面的な苦悩や葛藤」にフォーカスしている。そういう意味で、美術以外の世界で悩んでいる人にも大きな励みにもなるはず

ブルーピリオドはマンガ大賞を受賞しているが、この内面的な部分を描ききった作品として評価されたのだと思う。ここまで人の内側を映した作品はとても珍しい。

「ブルーピリオド」のストーリー

©ブルーピリオド 講談社

主人公・矢口八虎(やぐちやとら)は、成績はいつもトップクラス。要領の良いタイプで、人付き合いも上手く早慶は楽勝と言われていた。

徹夜で友人と酒を飲むなど楽しく毎日を過ごしている反面、どこか空虚な毎日でもあった。そんな時、美術室で見た1枚の絵に惹かれる。

美術部に入部し、絵を描く楽しさに目覚め、真剣に美大を目指すようになる。序盤(1~6巻)までは美大受験がテーマ。7巻以降で美大生活がスタートする。

美術や美大の世界が分かって面白い

全く美術に無頓着な八虎の気持ちがよく分かる。私も美術は全く興味が持てず、中学時代の授業は与えられた課題をざっくりと終わらせてばかりだった。(先生ごめんなさいw)

美術はそもそも上手い人というか。センスのある人だけが楽しめる分野だと勝手に判断していた。ただ、本作で描かれているように美術におけるテクニックは存在する。

上手い下手、センスの有無は影響するが、こういったテクニックを学ぶという努力が可能なのだ。美術は才能のある人達のモノと考えている人などは、漫画を読むと少し美術に対する印象も変わるだろう。

ちなみに、八虎は東京芸術大学という、見方によっては東大より難関と言われる大学を目指す。この東京芸大についても描かれるが、私がいかんせん無知で。この大学入学を目指すヤバさに触れているのも良い。

「2浪、3浪が当たり前」と言われる世界を想像したことがなかった。どんだけ関心がないんだよって話だが(苦笑)

思ったように描けない苦悩や葛藤による切迫感

八虎を始めとした登場キャラは、みんないい作品を作るために奮闘しているのだけど、みんな追い込まれている。美術を選んだのだから、そりゃそうなのだけど(汗)

冒頭でも触れたが、美術は自分がどれだけ最高の出来で表現しても、最終的には「他者評価」によって価値が決まる。これが苦悩や葛藤となり、描くことに躊躇いも出てくるというわけだ。

私がブルーピリオドを評価する点は、この苦悩&葛藤を見事に描いていること。「俺いける!」という自信を持ったかと思えば、「何もわかってない」と絶望するまでの精神状態の振りが波打つように繰り返される

ここを面白くないと思う人は、「ただただキャラが自問自答しているだけ」と感じるかもしれないが。「追い込まれ絶望する」という描写があることで切迫感が生まれ、本作の魅力を底上げしている。

いい先生も出てきて、潰れそうな生徒たちをバックアップするなど、スポ根要素も交わっていて展開も上手い。根性系は好きじゃないけど、ブルーピリオドなら許せてしまう不思議。

ジェンダー問題にも触れていた

「ヒロインが男性」というのは新しい。髪を伸ばしたスカート姿の鮎川龍二が登場した時は、正直なところ見た目が完全に女子なので戸惑った。「男だけど女とは?」みたいな。

ただ、読み進めていくと龍二の抱えている問題も描かれるなど、ジェンダー問題としてのストーリーも描いている。

彼に限らず、そう言われてみると本作は、男性か女性か分かりにくい人物が出ていたりする。この流れで考えると、作者の意図もあるのだろう。

美術は表現の一種だが、この男女というジェンダーもまた表現の一つとして扱っているように思う。

芸術は「他者評価に左右される」と書いてきたが、人の生き方は「他者評価では決められない」というメッセージとして深いテーマを描けている作品

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