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KATSU!がおすすめの人
- ボクシングに興味がある
- 男勝りだけど男子に夢を託す女子が好き
- 作品全体の3分の2が名作なら問題ない
読後感想としては意見が割れやすい作品。あれこれ言っても仕方がないけれど、もし万全の状態であだち充氏が描いていたら・・。そう思わされるほどの作品。
中途半端という声が出つつも、それでも面白かったという感想が残る当たり、やはり名作として紹介しておきたい。
いかにも「青春やってんな!」という話なのだけど、登場人物たちの思いが錯綜する不思議な漫画だ。色んなキャラに感情移入させられる。
「KATSU!」のストーリー
『KATSU!』全巻読了。いやぁ、なんと素晴らしきあだち充作品。あんな感じの男女の距離感、すごくグッときますね。恋がしたい気分になってきますね。
— ケイタ爆発 (@keitabakuhatsu) September 3, 2013
主人公・里山活樹は、入学した高校で出会った同級生・水谷香月が気になっていた。香月がボクシング経験者であることがわかり、香月の父が運営する水谷ジムに入会し距離を縮めようとする。
しかし、いざ入会して判明したのは香月がボクシング嫌いだということ。Wカツキの恋展開や、ボクシングを通したライバルたちが現れることで物語は動く。
ボクシングシーンがかっこいい
©KATSU! 小学館
主題となるボクシングだが、読んでいてボクサーのかっこよさを感じた。影響されやすいタイプの私は、ゲームだが「フィットボクシング」を買ったほど(笑)ボクシングは素人で、テレビで試合があるとチェックする程度なのだけど。
作中では活樹が全くの素人からボクシングを覚えていくため、自然と読者にもノウハウが蓄積されていく。読んだ人は、ちょっとくらいジャブやフックを打ちたくなる。
メインはあだち充作品らしく恋物語が注目されるが、このボクシングが面白くて早く活樹の対戦が見たくなっている私がいた。
最初は弱い活樹だが、彼が強くなっていく過程にも伏線を張り巡らせており、ただのボクシング漫画にならないところが素晴らしい。
香月がボクシングにおける夢を活樹に託す【ネタバレあり】
序盤だがネタバレ要素を含めた感想を少し。香月の「ボクシング嫌い」は序盤ですぐに出てくるのだけど、なぜ彼女がボクシングを「嫌い」とまで言わなければいけないのか。
この心理状態がすごく上手く描かれている。香月はボクシングの世界に置いて、あくまで女の子であることに変わりはない。幼い頃は男子と戦えても、成長に連れて嫌でも男女差を目の当たりにする。
現実の世界でも、この男女差があるゆえに夢を諦めている女性はいる。ただ、この現実にあらがっていたのが香月で、どんどん男子相手に戦おうとする。
そんな彼女も活樹に出会うことで、彼の才能に夢を抱くようになる。「活樹ならやってくれる」という思いから、サポート側に回るのだ。あんなに試合を求めていた女の子が。
今の時代、女だから諦めるということがよろしくない話なのは百も承知。
香月自身が夢を見られる相手に出会えたことで、彼女の「ボクシングにぶつけられない思い」が緩和されていくのは良かったのではないか。同時に思いを託される男というのも、素敵な話だと思う。
終盤の賛否は仕方がないと思う(3分の2は名作)
序盤から中盤にかけては、本作はいわゆる名作だ。正直、作品として3分の2だけに絞って当ブログで評価すればSランクをつけている。
ただ、連載中に作者・あだち充氏のお兄さんが、病気にかかり亡くなる不幸があった。これらの事情で、心身ともに負担がかかっており連載できる状態になかったという趣旨の発言をされている。(あだち充本180P)
そのため、ラストは打ち切りになるような「まとめ」に入った印象はどうしても拭えない。「中途半端」「消化不良」という意見も理解できるが、仕方がなかったと私は思う。
とは言え、失速気味で描きつつもしっかりまとめていることは事実。「未完の名作」と呼んでもおかしくない。