親を殺した少年Aの”悪”は再びスポットを浴びる『軍鶏』

ストーリー、ジャンル

親を殺した少年A・成嶋亮は少年院に収監された。少年院では嫌がらせを越えたイジメが待っており、亮の心にある闇をさらに深める事になる。亮は次第に、生き残る事にだけ執着する。

そんな中、終身刑の受刑者・黒川に空手の素質を見出され、亮の腕はメキメキと上達していく。多人数を相手に勝ってしまうなど、イジメを仕掛けていた少年院内のメンバーは次々と屈服していく。空手は亮を変え、亮は空手を求めるようになる。出所後は、その卓越した強さから格闘技界に身を置き猛者相手に死闘の日々を送る事となる。

ジャンルは格闘マンガになるが、単純に強敵に向かっていくだけの作品ではない。アンダーグラウンドなストーリーと成嶋亮の”悪の一面”がマッチしていく。言い換えれば成嶋亮は「悪のヒーロー」「悪のカリスマ」なる存在に育っていくという表現が相応しいのかもしれない。

ストーリーには区切りがあり、「少年院編」に始まり節目ごとに「~編」として構成されている。

成嶋亮は本質的に「悪」なのか

少年院編では、親を殺しているとはいえ成嶋亮を私は応援していた。親殺しの背景には、彼なりに苦しんだ過去があったであろうことを予想させる伏線が描かれていたからだ。イジメのシーンなども見るに耐えず、空手を覚えて強くなる亮を「頑張れ」と熱く見ていた。

しかしどうだ。少年院を出てからの彼の行動は、まさに「悪」そのもの。いや、親を殺していた時点で実は「本質的な悪人」だったのかもしれない・・と言わんばかりに彼は変貌を遂げて行く。彼には親を殺す以前に、深い闇があろうとなかろうと関係なかったかのように。

亮は純粋すぎて「悪」へと進んだのかと思うほど・・情状酌量の余地なき存在となる

そう言いながらも、私は亮を見て爽快感を覚える事もあった。悪い事をしているはずの亮がダークながらヒーロー性を帯びてくるのだ。相手選手への心理的な圧力のかけ方が汚かったり、弱みを握った戦いで試合を有利に運ぶなどのシーンがある。それでも勝ちにこだわる彼の「悪さ」は徐々に輝き始めるのだ。

ここで私は、亮という存在は人間の心の奥底にある「小さな悪」を極端に描いているだけなのではないかとさえ感じるようになった。本当は誰もが持っている凶暴性、悪意が亮という漫画キャラを通して具現化しているのかのように。この作品から感じるダークな世界観は、ごく平凡な人ほど惹きつけられるのではないか。

こんな人にオススメ

男性限定でオススメしたい。成嶋亮の「悪」について書いてきたが、見るに耐えない描写も多い。少年院でのイジメは、亮が男性の陰茎を噛みちぎるなど序盤からインパクトを残す。慣れれば大したことは無いがメンタルダメージを読者に与えるなど、こういったストーリーを気にしない人に薦めたい。

格闘漫画としては良質だ。この作品が他の格闘漫画と差別化できるのは、やはり成嶋亮の存在があってこそだろう。「悪い」の基準は個々によって違うが、とにかく「悪い主人公」を追いかけたい人は読んでみるとよい。序盤の少年院編は気持ち悪く嫌悪するかもしれないが耐えて欲しいと思う。

格闘シーンは、漫画っぽい”必殺技”など露骨なファンタジー系の技は存在しない。人間として空手として、リアルを追求している以上は、人間らしいレベル内で描いたのだろう。どの技もある程度は素人の動きで再現可能だ。もちろん、瞬時に相手の攻撃を避けるなどは無理だが・・。

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