出典:Amazon
軍鶏がおすすめの人
- クズ人間の話が読みたい
- 女性が読めない作品がいい
- 現実味のある格闘バトル作品が好き
「こいつは本当に酷い」という主人公はなかなかいない。漫画に限らず、物語の主人公は読者が共感できるポイントを何かしら持っている。ヒーローでなく、本当に悪のダークヒーローでもだ。
しかし本作の主人公は違った。やってることが極悪極まりなく、育った環境を考慮しても擁護しきれない。
そういう視点で読んでもらうと、珍しい作品とも言える。悪いやつに徹しきろうと思ってもどこかブレるからね・・。クズ人間の話に抵抗がなければぜひ目を通すと良い。
「軍鶏」のストーリー
©軍鶏 講談社
両親を殺したことで少年院に入ることになった主人公・成嶋亮(リョウ)。待っていたのは残酷なイジメ。この出来事をきっかけに、体育教官より空手を習う。強くなり生き抜くために。
少年院の出所後は、暴力に明け暮れ裏社会の人間として生きていた。そんな中、ショービジネスとしてスポットライトを浴びる格闘家・菅原直人の存在を知る。
以降、格闘をテーマにライバルたちと戦う展開が繰り広げられる。
少年院編から始まるエグさは序章に過ぎない
本作は、〇〇編といった具合にストーリーが流れていく。その中でも、物語の序盤である少年院編は衝撃的。読者の好みに合うかどうかの試金石となる。
少年院に入った瞬間に、「あ・・関わったらダメな奴らがいる」という空気感が漂う。他の院生たちの顔つき、風貌がもうワルなのだ。結局彼らにいじめられ、リョウはレイプされるなど悲惨な思いをする。
描写はもちろん、逃げたくても逃げられないという精神的な追い込みもきつい。心を殺されそうなリョウは、空手を習うようになるがここから変わっていく。
ただこれ、序章に過ぎなくて。リョウそのものがクズ人間のお手本のような存在となり、主人公なのに救えない悪になるんだよね(汗)
少年院を出て早々にライバルになる菅原というキャラがいる。そんな菅原の彼女をレイプする場面もあるが、とにかく胸糞悪いしエグいという表現が似合う。
漫画と割り切って男性は楽しめる部分もあるかと思うが、女性には率先しておすすめはできないな・・。
格闘シーンや絵は上手いが、ストーリー展開はチグハグもあった
格闘シーンは絵も上手く現実感ある戦いのため、読み応えは確かなもの。格闘なので画力がないと、迫力の無さで飽きることもあるが、本作はそういった絵面の心配はない。
ただ、ストーリー展開にはチグハグ感があった。もちろん、好みもあるので分かれるだろうけれど。私としては、少年院編からリーサルファイト編に流れる展開は最高に面白いと思った。
しかし、その後も〇〇編といった戦いがあるのだけど、インパクト勝負でやってきた分、どうしても微妙に感じたかな。
理由は分からないながらも、原作者と作画の関係でトラブルもあったようだ。原作は連載当初に大雑把な原稿だけだったらしく、それから続けていたならチグハグ展開も納得してしまうというか。
作品としては面白いので、作り込まれた原作がもし存在したら・・と考えてしまう。格闘漫画なので、バトルしてくれればそこまでストーリーは無くても読めるのだけど。
序盤からストーリーで読者を魅了するタイプの作風だったので、転調するというかペースダウンしたかなという印象。
「正義や愛のために戦う」といった綺麗事ではない面白さ
『軍鶏』は格闘漫画の最高の作品の一つと思います。
格闘技とは何なのか。暴力との違いはあるのか。
身を守るのが格闘技ならば、
他者を傷つけようともただ生きたいと願い振るう拳も格闘技なのか。
日本の格闘技ブームとその終焉にもリンクして綴られる物語は、格闘技ファンの私には深く心に残ります。— こすもも (@klangklang_2) August 16, 2019
格闘マンガは何かしら戦いに意義を見出しているのが通常だが、本作では「正義」とか「愛」とか「誰かを守りたい」とか。ありがちな展開で構成されていないのが良い。
格闘技そのものが、人を傷つける要素満載なので、綺麗事で包まないといけない側面があるのは分かりつつも。その点では、本作は必ずしも美しくはない。
生きていくため、殺されないため。そんな動機から始まるダークヒーローの戦いに興味がある方に向いた作品。こんなに共感できない格闘漫画の主人公って珍しいよ(苦笑)