『黒博物館 スプリンガルド』ダークヒーロー”バネ足ジャック”の躍動感に酔え

ストーリー、ジャンル

19世紀のロンドン。女性へのいたずらを仕掛ける1人の犯罪者が現れた。犯罪者の脚にはバネが仕込まれており、イギリス国民からは「バネ足ジャック」と恐れられる。バネ効力を利用し高く飛ぶ、目と口が光る不気味さ、そして奇怪な笑い声を発している怪人の正体は何者なのか。彼は正体不明のまま消えてしまう。

それから3年の歳月が流れ、再び「バネ足」は現われた。しかし今度のバネ足は以前のいたずらに止まらず、女性を殺害する殺人者となって世間を震撼させた。バネ足の正体・謎を追いかけるストーリーが動き出す。

これは実際に起こった事件、史実を元に作られているが、都市伝説だったとも言われている。そんな「バネ足ジャック」だが藤田和日郎テイストで描き直された。ミステリー・サスペンスの要素にアクションも加わっており、短編作としては非常に良く出来ている評価の高い作品。

謎、アクション、ミステリーと豪華要素が満載

 

ロッケンフィールドという警官が、警視庁内にある展示物「バネ足ジャックの左足」を見学するところから物語は始まるが、この入り方は短編作として切れ味がいい。同時に学芸員(キュレーター)というキャラクターが解説を始めるのだけど、警官が真相を語り始める事で立場が逆転。

学芸員が話の続きを気にするようになり、毎回ごとに上手くストーリーを煽る役目となる。「それでそれで?次はどうなるんですか?」と入れるだけで、こうも作品が面白くなる物なのかと思わされた

それにしても、最初は「バネを足につけてそんなに高く飛べるか」「何だ不気味な光は」と変にツッコミを入れながら読んでいたが、もうそれはどうでも良くなっていった。ストーリーにツッコミを許さない、いや気にさせない魅力を感じさせたのだ。ダーク・ファンタジーの世界観とバネ足の融合は見事。

序盤から「バネ足の正体」には近づくのだけど、もちろんアッサリと解決という話では無いのは漫画のお約束。

後半のバネ足VSバネ足の戦いになった時は、たまらなく興奮した。偽物と本物がぶつかり合うのだけど、このストーリーに行きつくまでの人間臭いドラマがバネ足(本物)にある事がとても重要となる。短編作として、かなり制限された中でドラマを見せているのは藤田氏の実力に尽きるだろう。

謎解きとは違うけれど、謎に引っ掛かった状態でストーリーは進行するし、要所でアクション展開があるなど見どころ満載。藤田氏にとっては、お得意の世界観だったようにも思う。「薄気味悪さ」というのは本作に取って大事なファクターだったのだろう。終始、読み手にも伝わる気味悪さが何とも言えない

こんな人にオススメ

ちょっと絵のタッチが荒いように思えるので、絵柄を先に見ておいて大丈夫そうなら読んでみるといい。個性派の絵に分類されると私は思う。ストーリーは問題ないのでご心配なく。謎、ミステリーが好きな人は買って損はない。終盤で起こるアクションバトルも素晴らしい。

作品に臨場感を求める人には向いている。私は本作にキーワードを与えるなら「臨場感の凄さ」を刻みたい。バネ足との接触や、アクションシーン、事件の様子などあたかもそこに自分がいるかのように感じ取れる空気感は秀逸の一言

嬉しく思ったのは、一部と二部に繋がりがある事。どちらも手抜きの無い力作で満足だったと伝えておく。

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