読後からでもやり直せる青春の1ページがココにある『1/11 じゅういちぶんのいち』

ストーリー、ジャンル

主人公・安藤ソラは自分の才能に限界を感じ、中学卒業と同時にサッカーから離れる事を決めていた。そんな彼の引退試合目前の出来事だ。女子日本代表・若宮四季がソラの前に現われた。

若宮はソラに対してアドバイスを送り、引退試合での活躍にアシストをして去っていった。引退試合から帰宅したソラは、若宮の死を知る事になる。そして、知る事になる。実はソラと若宮の過去には接点があったということに。

ソラは若宮の助言を大切にし、サッカー再開を決めた。ソラは進学先の学校でサッカー部を設立。懸命に盛り上げようと頑張るソラに周囲の人物の心は動かされて行く。

形式的にはソラが主人公だが、登場人物ごとに視点を持たせたストーリーが展開される。サッカー漫画というジャンルに位置しているが、メインに描かれているのは青春ドラマとなっている。

主人公・ソラを取り巻く人物たちのドラマ

サッカー漫画なのだけど、サッカー話についてはやや控え気味の作品。サッカー漫画としての位置付けだが、青春ストーリーに心が動かされる。華麗なゴールが決まる事に感動を求めるサッカーファン専用の漫画との違いがはっきりしているので、ここだけ勘違いしないように注意が必要

オムニバス形式でどんどんサッカー部が作り上げられていく過程を見るのが楽しい。登場人物の1人1人に焦点を当てており、主人公・ソラだけの視点に持っていかないところが良い。ソラは元より、サッカー部に入ってくる個々の人物の事情が複雑で、一筋縄ではいかないところに青春の物語りを感じる。

マネージャーの篠森などは序盤から記憶に残るが、「マネージャーなんか無駄」と父親に責められてしまう彼女が気の毒で仕方が無かった。しかし、保護者の監視下の元で学生生活を送る人には、普通にある話なのではないだろうか。親に勉強をするように言われながら、隠れてマネージャー活動を頑張る彼女の健気さはよかった。

マネージャー活動に批判的な父も悪意はなく、自分が学生時代を部活に費やして学歴社会でハンデを負ったと感じているところなどは読み手にモヤモヤを与えるポイント。単なる学歴重視の父親なら「ムカつく」で終わるのになぁ・・。この家族の状況を、母親の立場からどう感じているかを夫と娘に説明するところでグッときた。

本作は、全体的に「読む事で生きる活力に変わる」という作風な事には違い無い。がむしゃらに生きる時代というのは、大人の持つパワーとは比較にならないものがあるのだなと感じさせられる

学生時代はもちろん、プロの世界の話も描かれている。どこまでも青春している彼らの姿を追いかける事が、楽しみで仕方が無い。

こんな人にオススメ

「初心に戻る」というのは誰でも出来る事では無い。忘れてしまった青春の1ページを、もう一度だけ振り返る事ができるのならどれだけいいだろうか。そして思い出せるのは楽しかった日々なのか、それとも退屈に明け暮れた日々なのか。それは読者1人1人にしか分からない。

私は部活にも所属せず、ダラダラとした青春を過ごしていた帰宅部員なので大人になって後悔している事も多い。そんな時に、この作品を見ると「別に大人になった今からでも全力でやりゃいいじゃないか」という気持ちになる

サッカーを諦めようとしたソラが立ち直った事と、大人の私には差があると言われるかもしれないが私はそうは思わない。11分の1に登場する人物は、誰一人として諦めた消化試合のような生き方をしていない。勇気を貰える作品が欲しい人には絶大な効果をもたらしている。

絵のタッチも爽やかで、”青春らしさ”という表現がしっくりくる。スッキリした描写は読者に届きやすい。すべてが学園内の話で無いところも良い。高校時代~プロになるまでの時系列に動きもあるため飽きない作りだ。

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