あだち充の描くヒューマンドラマ『SHORT GAME』

ストーリー、ジャンル

あだち充氏の短編集。高校野球を舞台にスペリオール、スピリッツ、少年サンデー誌上で掲載されていた作品をまとめたもの。

輝かしい投手人生を故障で挫折した主人公を登板させる「リリーフ」をはじめとした5作品を収録。プラスで2~3ページのギャグ漫画もいくらか収録。あだち充ファンの為の1冊となっている。

野球漫画ではあるものの、フタを空けてみると人間ドラマに多くスポットを当てた作品であることがわかる。少し大人向けのあだち充作品という感覚で読むと良い。

野球シーンの少ない高校野球漫画

あだち充氏と言えば野球漫画だが、本作は野球シーンはお預けに近い状態。躍動感に溢れたピッチング風景、バシッと決まるストレートなどは皆無に等しい。

それではなぜこれを薦めているのかと言うと、あだち充がお得意の「野球描写」や「恋愛シーン」に頼らなくても素晴らしい作品を描き切れていたからだ。当サイトではクロスゲームなども書評しているが、あれらの漫画は「圧倒的な野球描写」と「素晴らしき青春の恋愛モノ」として評価したからこそ紹介したのだ。

本作はそのうちの一つ、「野球描写を封印した状態」で読む事になる。私はあだち氏の「野球描写」を見るつもりで本作をツタヤで借りたのだけど、少し読み始めて内容を知ってショックを受けたくらいだ。何しろ中身はヒューマンドラマを描いているのだから。

しかし、あだち氏らしい「成功を収めていく球児」ではなく、無念というべきか苦しみもがくキャラをメインに出しているのは斬新な気持ちになる。みんなが甲子園に行ける訳ではない。優勝校の下には、その他の負けた人たちがいるという事が作品から語られているような感想を持った。

そういった男子を支える女子も素敵で、あだち氏の描く女性の魅力を存分に発揮できている短編作品である。男子向け漫画において、”素敵な女子”は切っても切れない関係だという事を改めて理解させられた至高の1冊

こんな人にオススメ

高校野球の華やかな舞台に飽き飽きしている人向け。いつも勝者にスポットが当たるのは野球に限った話では無いが・・。失敗した人や挫折する人がいるからこそ成立するのがゲームだ。そういった陽の当らなかった選手たちをあだち充氏が描いていると思っておくと認識にズレは無くなるだろう。

勝負を決める場面の緊張感こそ存在しないが、それはそれで見応えのある立派な野球漫画だ。運動部の裏方にいる女の子などが好きな人も、本作を読むには向いているんじゃないかな。

注意が必要なのは、間に出てくるギャグ漫画は退屈というところ。あだち充テイストなので私は読んだが、好まない人は読み飛ばすというのもアリ。そんな退屈な部分を差し引いても良い仕上がりである。

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