両親惨殺から7年・・・少女はプロ棋士となった『しおんの王』

ストーリー、ジャンル

4歳という幼き日に、目の前で両親を惨殺された主人公・石渡紫音。彼女は事件のショックから失語症となった。両親の惨殺現場は誰も見ておらず、手掛かりは血塗られた「王将」の駒などの遺留品。そして残された、紫音だけが犯人を見ているという事実のみ。

これらの事件は、紫音自身も悲しい過去として心の中に封印しており、周りもなるべく触れぬようそっとしていた。事件後は、隣家の将棋プロ棋士夫妻の養女として生活を送る。そういった中で紫音の卓越した将棋センスは輝き、12歳という年齢で女流棋士の道へ進む事となる。

しかし、ここで紫音は「悲劇の過去」を持った人物として注目を浴びてしまう・・。

ジャンルは「将棋」になるが、同時に紫音の親を殺した「犯人探し」が展開される。推理サスペンス+将棋という少し混ぜ込んだ作風だが、サスペンス調で楽しもうと将棋漫画として楽しもうと申し分ない仕上がり。

過去の傷に耐え強くなっていく少女

この漫画を読んでいると心が痛くなってしまう。特に紫音が対局中にメンタルを揺さぶられるシーンだ。囲碁将棋マンガの見どころに、対局者同士の心理的な揺さぶりがあるのはご存じだろうか。

一手一手に全身全霊を掛けて臨むプロ棋士たちは、たった一手のミスが命取りになる。そこには心理的な要因も深く関係するため、漫画内で心理戦が描かれやすい。

特に紫音には、両親が殺害された記憶のトラウマがある。この事情を知っている人間は、「紫音の弱点」としてさり気なく「事件の真相」に触れようとしてくる。実はここが上手い作風で、紫音に限らず読者も真相が気になるように作られている。将棋の展開が気になるのと同様に、犯人の正体が知りたいと思ってしまう。

こういった紫音への心理的圧殺が、彼女の壁となり立ちはだかるため読み手も「今のタイミングで紫音にそんな事をいうな!」という気持ちになってしまうのだ。「親が殺された事を思い出させる」というのは紫音で無くとも、人として動揺するだろう。

しかし、盤をまたげば自分と相手だけの空間。紫音は精神的に乱れながらも、今指せる手を探し出し戦い続ける。そんな姿を見ていると応援したくなってしまう。12歳の女の子といえど、プロの世界に身を置く存在。懸命な彼女はとても素晴らしい。

こんな人におすすめ

対局における心理戦や、犯人を追うサスペンス調が好きな人は問題なく読める。将棋と推理サスペンスの総合ではあるモノの、全体的には将棋の場面が多いので将棋好きな人向けではある。

そして紫音に止まらずライバルたちの将棋への想いは、熱く煮えたぎっている。対局者の張りつめた空気感、まとわりつくプレッシャー、「勝ち」への執着心の感じられる対局シーンはオススメだ

紫音は愛くるしい。作者の狙いだと思うが、声を出せない分だけ守ってあげたいと思わせる可愛らしさが彼女にはある。言葉で伝えられない分、表情や態度で読者に語りかけてくる印象を受けた

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