広角的なセリフ回しと世界観が魅力!シュール系コメディ『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』

ストーリー、ジャンル

阿部共実氏が描く短編ショート作品。10代女子を中心に人々のうまくいかない日常を描くオムニバス11編を収録。作品によりページ数が少ない物から多い物まで幅広い。少年少女が放つ独特のセリフ回しは秀逸性を保っており、個々のキャラクターの存在や魅力を引き出している。

好き嫌いの分かれる作品だと思うが、作品そのものに漂う世界観は広角的で面白さに振り幅のあるギャグコメディ。シュールな笑いを誘いつつ、どれもしっかりと軸を持たせているため読みごたえは抜群。

アルティメット佐々木27の「はいどーん!」がいちばん好き

学生を中心とした10代の若者のやり取りを数多く収録していながら、異彩を放って最後まで私の中に残ったのは第8話「アルティメット佐々木27」である。27の数字の意味は、27歳という意味であまり意味はない。恋人もずっといない佐々木は、まだ見ぬ王子様を待ちながら食べ物に気を使い、無駄毛処理も怠らない女子。しかし残念!

何が残念なのかと言うと、見た目は可愛いのに努力の方向性を見誤っていることだ。少しのページしか無いのでネタばれを避けつつ書くが、彼女のネットでの調べものが美容や恋愛でない事は笑ってしまった。恋に焦がれた27歳女子に「何を調べているのだw」とつっこまざるを得ない。佐々木は残念系ガールなのだ

しかし、この馬鹿っぽさが可愛いのも事実。明らかにみのもんたの影響を受けていると思われる行動が面白く、その独特の間を再現している。もちろん強引にフリップをはがしているので「面白い間」という意味だ。

そして次におすすめなのは第3話である。猫グッズを買う部下の市川の家に行ってみる女性主任の話なのだけど、市川は猫グッズを”買うだけ”で猫そのものは飼わないと知る。猫を期待していただけに、困惑する主任だが市川から猫グッズを直に使う事を提案される。こうなってくると市川ペース。

主任は気がつけば猫グッズを身につけて興奮しているという展開に

これまた10代とは年が離れた設定だが、乗せられてどんどん猫になっていく主任が可愛くて評価せざるを得ない。主任の興奮は伝わってきて「はぁはぁ」言いながら猫になり切って行く姿が可愛い。「本当は猫プレイをしたいのでは?」というエロさがにじみ出ている。市川にペースを握られた主任の行動は必見。

言語センスを感じ取れるギャグコメディ

ここまで紹介してきたのは20代の人々の話だが、10代の人が出てくるネタの方が圧倒的に多い。「好きな先輩や同級生に想いを伝えたくても伝えられない」といった漫画は多いが、この切なさをギャグとコメディの合体技で読者に伝えてくる。

言葉遊びをしているかのように、さまざまな言い回しの表現が使われているが作者のギャグセンスが光っているからであろう。「この言い方がウケル」というポイントが散りばめられていて、文字を追う事に楽しみを見出せるのも評価できる理由

漫画という媒体は絵を通して読者に主張するため、文字で注意を引くというのは並大抵の言語センスでは成立しにくい。それを本作はやってのけているので試しに一読する価値はある。

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