彼女が兵器だった時、彼氏は何ができるのだろう『最終兵器彼女』

ストーリー、ジャンル

実感が湧かないのは、主人公・ちせが普通の女子高生として可愛いからだろうか・・。私のいう実感というのは、彼女が「最終兵器」だという事。北海道のとある街で、ちせと彼氏のシュウジは幸せに暮らしていたが、ある日空爆に襲われる。そこで、シュウジが目にするのは彼女・ちせの変わり果てた姿だった。

ちせは腕に巨大な武器を携え、背中には鋼鉄の羽が生えている。マッハの速度で空を飛び、強力な破壊力を持った彼女は紛争の切り札として生きていた。何も出来ないシュウジは、彼女が最終兵器として現場にかりだされる姿を見ている事しかできないまどろっこしさを抱える。

序盤は温かいラブストーリー的な雰囲気が漂うのだけど、ちせの正体がわかってからは二人の間にぎこちない空気が流れるようになる。このまま戦い続ければどうなるか・・そんな事は、小学生でもわかると言わんばかりに。絵のタッチは優しく、高橋しん氏の作品らしさが出ているが、ストーリーは終末モノでかなり重い。

こんなにも切ない終末があるのだろうか

ちせは「最終兵器」として活動する女子高生だけど、その最終兵器という言葉が適切と思えない。強そうではあるが、無敵な状態では無いんだよなぁ・・。「最終兵器なのに、そんなに弱くていいの!?」というシーンがたびたびある

その影響か最終兵器ながらも、か弱い女子高生としてのイメージはしっかり印象づいて話は読み進められる。そもそも無敵の兵器だったら面白くなかっただろう。男性なら、彼女を守りたいと思うだろうが、それが出来ないシュウジの苦悩が見てとれる。

戦闘で傷ついた身体を見られたくないちせの気持ちや、その姿を本気で心配するシュウジは切ない。彼らは普通に幸せなカップルでいたかったはずなのに、ただただ理不尽な現状を飲み込むしかない状態におかれる。シュウジもちせの仕事について深く追求しなかったりとお互いの心に距離もある。

互いに不器用で、読んでいる側でさえ何故か照れくさくなる雰囲気。お互いが近づくほど、理解を深めようとするほど「最終兵器」として活動するちせの立場が苦しく見えた。もちろんシュウジも男として、何も出来ないというのは歯がゆく思うのだろう。

SF系だけど、列記としたラブストーリーなんだよなぁ・・としみじみ。

本作は、戦時中を描いているものの、肝心な紛争の部分はボカシ演出となっている。俗にいう戦闘におけるバトル描写は無しで、もちろん戦闘員同士のリアルな殺し合いも無い。作品全体が、今どいう状況で何が起ころうとしているのか、人が死んでいるのかなどもわからない。

これは意図的に描かれている。作者もラブストーリーを描いていると断言済み。そんな恋物語の未来に向けて、シュウジと最終兵器彼女・ちせのストーリーが感動に包まれて行く。最後はやっぱりみんな泣くんじゃないかな・・。兵器となった彼女と、その彼氏のラストに期待して欲しい。

こんな人にオススメ

あまり「SFだから」とレッテルを張ってしまう必要はないかと。

「純愛ラブストーリー」にピンとくる人には面白いはず。設定に現実味が無いので、気にする人は気にするのだろうけど。私も未読だった時は、ここまで恋愛を推している作品だと思っていなかった。「最終兵器」というタイトルだけみると、バトルを期待してしまうので。

健気なカップルが支え合う中で、すれ違いが起こったり、誤解や勘違いを招くという恋愛の基本ストーリーが好きな人には向いている。かれこれ純愛漫画は世に出ているが、こういった作風も存在するのかと関心しながら読めた。

一つだけ注意点があるとすれば、何かと作品に対して理屈や設定をハッキリ求めたがる人は厳しいかと。戦争に関する情報や、ちせが兵器に至るまでの過程は曖昧なので、設定を追求してしまう人は「なんで?なんで?」となってしまう。本作はムードや雰囲気による感動を求めたり、それで涙する作品として私は評価している

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