オッサンも影響を受けてしまう本格チェス漫画『盤上のポラリス』

ストーリー、ジャンル

小学5年生の主人公・椿一兵は長崎の離島に住んでいた。一兵は「冒険の世界」に憧れており”伝説の勇者になりたい”という夢を捨てきれられない。そんな一兵は、わんぱく小僧でインドア要素皆無の少年かと思いきや・・。

ある日、転校してきたヒロイン・氷見崎ひめという病弱の少女と出会う。彼女はいつも1人でチェスを指しているおとなしい子だったが、このひめとの出会いが一兵をチェスの世界へと誘った。そんな彼女がアメリカに行くことが決まった際に「※グランドマスター」を目指すと誓う。(※チェスの世界チャンピオン)

一兵はチェスの面白さを知り、夢に見ていた冒険の世界が「盤上」にある事を意識する。その後は、ライバルとなる灰堂レンとの接触など序盤から見どころ満載。本格チェス漫画であり、戦術への解説などが丁寧に加わるためチェスに無知な人でも楽しめる上質さのある作品

“盤ポラ”読者から「グランドマスター」が出る日を夢見たい

まず語るべきは、作者の若松卓宏氏が描き上げた絵の素晴らしさ。可愛らしく優しい少年少女のタッチは読者に読みやすさと安心感を与えてくれている。

しかしこの絵に騙されてはいけない。誰でも違和感なく読み始められ、初心者向けのチェス漫画ではあるがストーリーは鳥肌モノの衝撃がある。少年誌といえど侮れない本格チェス漫画だ

ストーリー運びも秀逸で、序盤からテンポよく描かれており、野性的な遊びばかりしていた少年を「座って思考させるチェス」に見事に打ち込ませる展開に持っていく。友達になった少女・ひめのために覚えた結果、冒険の道が開かれる一兵のワクワク感が読み手にも伝わり爽快な気持ちになる。

チェスの場面はなるほど面白く描かれていて、知識が無くとも解説が無くとも「絵」で力強く読み手に楽しい世界観を演出してくれている。盤上を駆ける手駒たちが、まさに戦火を広げて行くようなインパクトは圧巻の仕上がり

時には闇に包まれる一兵だが、考えに考え抜いて一手を繰り出す姿は見ていてチェスがわらかなくても惹かれてしまう私がいた。私は「ヒカルの碁」で囲碁を覚えたクチだが、この作品も同じく「読んだだけでチェスを覚えたくなる」ような仕掛けが施されている。

私はチェス業界に詳しく無いが、こういった良質な作品が漫画として表に出る事で、少しでも小さな子どもたちに浸透する事を願っている。どんな競技も、子供たちに興味を持ってもらい熱心に遊んでもらって初めて競技全体のレベルが上がると考えているからだ。

何よりオッサンである私が「盤ポラ」を読んだ事で、「チェスを覚えたい」と感動しているのだ。オッサンになると感動したり影響を受ける事が消えて行く。そんな私がここまで言うのだから”本物”と思って頂ければ幸い。この作品を読んだ子供が「グランドマスター」になったら・・と考えると夢は広がる。

ボードゲーム好きなら本気で読むべし

おすすめできる層に共通項があるとすれば、「囲碁・将棋そのもの」もしくは「漫画」などボードゲームにハマった経験のある人だろう。もちろん全く読んだ事が無い人にも薦められるが、ボードゲームが好きな人は間違いない楽しさ。

チェス知識が無くても、他ジャンルのゲームで知識をつけていれば大まかな戦況は空気でわかる。違和感のない解説もしっかり作品内で繰り広げられるので問題ない。

序盤はヒロインとチェスとの出会いから始まるが、やはりチェスを最大に活かす「盤上での戦い」が本作最大のウリ。一兵のライバルとなる灰堂レンとの出会いも含め、大会までの流れは休む暇も無いまま一気読みさせられた。

見る人の目に止まれば、「漫画なんちゃら大賞」は当確と言われるレベルにあるだろう。まだマイナーではあるが、少しでも多くの人の目に触れて駆け上がってくれる事を願うのみ!

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