人生の手本にすべきダメ人間に感動『俺はまだ本気出してないだけ』

ストーリー、ジャンル

主人公・大黒シズオは40歳にして会社を辞め漫画家を目指す決意を固めた。シズオはバツイチ子持ちで、大黒鈴子という娘もいる。また、シズオの父親である大黒志郎には悪態をつくなどまるでダメ男。

そんなシズオの夢を追う姿勢を描いているのだけど、道中は山あり谷あり。彼の真面目な姿勢もあれば、やる気を一瞬で失うなどニートのような生活も描かれている。しかし関わる人たちとの交流はまさに人生ドラマそのもの。心温まる作風で、”ただのニートもの”とは思わせない仕上がりだ

会社を辞めてからの雑な生活は笑いを誘うが、しっかりと漫画ファンを唸らせる「感動」も用意されている。ベターだが、笑いあり涙ありの全5巻作品。

大黒シズオという「人生の手本」

見どころは、良い歳(40)をして漫画家を目指そうとするも、それに伴った行動に至らないシズオの痛々しい言動。おおよそ成熟した大人像とはかけ離れている彼だが、周りにいる人々やシズオ本来の人間性があって何とか社会と繋がり続ける。漫画も描かずフラフラする事もあったり、序盤はニート扱いで違和感なし。

正直1巻を読んだ後は、「ただのニート漫画」という印象しか無かった。本当に酷いダメっぷりで、留学費用の為に風俗店でバイトしていた娘とバッタリ会ってしまうなど目も当てられない話が次々と起こる。しかしこれは掴みの話だった。この漫画は、ダメな人を描こうとしているのでは無い

ストーリーが進行して行くほど、内容は深々と描かれている事に気がつくだろう。今の世の中に溢れた価値観への挑戦権をシズオは持っているように思う。なんでもかんでも「勝ち組」「負け組」で順位をつけるのは幸せな世界だろうか?とシズオは作中から読み手に問いを出している。

自分なりにどう生きられるかが勝負なのであって、他者と比べてどうだという考えがシズオからは一切放たれない。少なくとも私はそう感じシズオを見ていた。彼をダメ人間と評価する人こそ愚かで「シズオの生き様」から人生哲学を勉強させてもらえる作品だった

ダイジェストみたいなのを5巻の冒頭でやっているのだけど、ここを読めばそれなりに全体の内容が理解できる事にびっくりした。「前フリの1~4巻とは何だったのか」 と思うほど、コンパクトにまとめられている。しかし、最初から読む事でしか得られない、”シズオが伝えたいメッセージ”こそが本作の魅力だ。

こんな人にオススメ

画力を求める人には少々の退屈が訪れるかもしれないが、本作はゆるい立ち上がりからラストに向かって続くヒューマンドラマだ。「人生に悩んでいる人」「何事も上手くいかないと思っている人」「生きる事が嫌になっている人」など、どちらかというと辛い日々を送っている人こそ読むべき

シズオは、人生の迷路に入り込んでしまっているように見えるが、その迷路の楽しみ方を教えてくれている。彼のバイトでの店長(あだ名)というポジションだって彼には幸せの形なのだ。「一生懸命に生きているだけで素晴らしい事なんだぞ」と励まされたい人にぜひ届けたい漫画だった。

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