電子書籍が紙漫画を”贅沢品”に変える!?『ナナのリテラシー』

ストーリー、ジャンル

漫画家視点、編集者視点など出版業界の作品は近年増えてきている。しかし「電子書籍」について描かれた作品は、ほぼ存在していないに等しかった。

そもそも、読者側も「電子書籍」がどういったモノなのかすらわかっていない状態の人も多くいるのではないか。本作はそんな漫画の電子化について、作者の鈴木みそ氏が実体験をモチーフに解説を交えながら描かれている。

ストーリーは、主人公・許斐七海(ナナ)が天才コンサルタント・山田仁五郎の元に職場体験に入る事から始まる。この山田が、鈴木みそ氏を「紙の漫画家」という位置付けをした上で、「電子の漫画家」にシフトさせるコンサルを行っていく。

付き人のナナは読者の立ち位置にあたり、ストーリーを通して業界の事や電子書籍の未来について話を分かりやすく聞かせてもらいながら学んでいく。ナナを通した読者視点は秀逸で、電子書籍について新しい発見や気づきを与えてくれるだろう

鈴木みそ氏自身がまだ歴史の浅い電子書籍に素早く対応した事で、Amazonのキンドルランキングに食い込めた事など”稼げた裏話”も惜しみなく披露されており電子書籍に関心のある人にはありがたい。漫画出版業界の電子版というジャンルに分類される内容。

「紙の本」が売れなくなっても「電子の本」が残っている

常に時代は進化し、コンテンツの売り出し方は変化を続けている。インターネットを通じたコンテンツ販売市場はまさにそれを現わしており、音楽・映像・新聞など様々な分野で販売方法が変わってきた事を体感している人は多いだろう。

そんな時代の流れにおいて、出版不況で廃刊になっていく雑誌のニュースなどの話を聞いたことのある人もいるかと思う。しかし、本当に不況なのか?と思わされるのが本作の見どころにもなる。

というのも、不況の中でもやれる事がまだまだ残っているからだ

それは、出版業界がやってきたこれまでの紙媒体を通した売り方が古いだけで、時代の流れを読み電子書籍に目を向ける事で打開案が見えてくるということ。この売れない漫画側にいた鈴木みそ氏を、コンサルタントの山田が売れる方向に導くという図式が面白い

 

安易に電子化に踏み込めない事情

山田は売れない漫画家こそ従来の出版社任せにした売り方をせず「漫画の電子化」を勧めている。

元来の漫画家は、漫画を描いてさえいればよかったかもしれないが、これからは自らを売りだして行ける時代なのだという事を伝えている。ウェブサイトやツイッターで漫画家自身の”個”をどんどん出すべきだとも訴える。

今やド素人でもAmazonキンドルに出版できる時代だ。そんな素人がわんさかいる場所に、プロの漫画家が出版すれば、売れない人でもチャンスありというのは予想に容易いだろう。

山田と鈴木氏とのやり取りはリアルだった。漫画家が電子書籍に向かう事で未来は明るくなるという可能性が、十分に予想できる話は電子書籍を知らない人にとっては驚くべき内容だろう。

すでに現時点で、書籍の電子市場が急成長をしているのも納得がいく。山田は業界の売上データを元に細かな解説で読者に伝えており、これを読んでいると紙派の私もいつまでも紙で漫画を読めるとは思えなくなった。ただ漠然と「漫画は紙で読むモノ」と思っている人ほど、考えさせられる物があると思う

また、漫画家も出版社にはこれまで出版誌を通してバックアップして貰っていた為、安易に独立して電子書籍に踏み込めないなどの事情もあるのだそうだ。漫画家と出版社という業界内での対立関係はお互いに取って避けたいところなのだろう

こんな人におすすめ

「書籍は紙の漫画で読む物だと思っている人」や「電子書籍の凄さがよくわからない人」は読んでみるとまるで文化の違う話を聞いているかのような気持ちになる。どこまで電子書籍が普及しても「自分はずっと変わらず紙で読み続ける」と思っている人ほど読む事を薦めたい

私の感覚だが、今後の書籍の未来はやはり電子化に完全以降すると思う。もちろんすべて紙の本が消えるとは思えない。なぜなら、コミックをコレクションアイテムとして所持したい層の人が一定数は必ず存在するからだ。おそらく人気して増刷が掛かり続けるような作品は紙でも出版され続けるだろう。

逆に、一部の人にしか売れないコミックは出版すらされず、電子中心の販売方法となっていくだろう。出版されても「コレクショングッズ」という名目で、少し高価なグッズ扱いで売られる日もそう遠く無いような気にさせられる。私の感想を読んで、電子書籍の世界が気になった人は読んでみるといいだろう。

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