生きる事に疲れた人、しんどい人に届けたい漫画『ちひろさん』

ストーリー、ジャンル

安田弘之氏の作品「ちひろ」の続編。(前作レビューはこちら)

ストーリーは、元風俗嬢の”ちひろ”が海辺の小さな弁当屋で働きながら、訪れる客たちと関わりながら生活して行くというもの。恋愛や仕事といった悩みから、家族問題まで幅広い悩みがちひろの取り巻きに溢れていた。

前作では風俗客を相手にした展開が中心に描かれていたが、本作では「ちひろ”さん”」と周りから慕われながら問題に向かう様子が描かれている。ちひろ自身は特に問題解決するつもりが無くとも、ちひろに関わった人たちが救われたり助けられたりする場面が多く物語りの軸となっていく。

大きなジャンルで括ると、「女性の生き方」だろう。しかし弁当屋への嫌がらせ相手などに、ヤクザ顔負けの仕返しをしに行ったりと裏の人間ぽくも映るのが面白い。ちなみに弁当屋なのに源氏名で「ちひろ」と名乗っている

「ちひろ」という女性が築き上げて行く”オンナの幸せ”

人それぞれに幸せの形があり、みんな別々の道があるのになぜか「幸せの定義」が決められているところが世の中にはある。男性だと出世してお金を稼いで綺麗な女性と結婚してとか・・。これは私の価値感も影響した考えなので、これまた人それぞれとしか言えないのだが。

そして同じように、女性には女性たちで作り上げた「幸せな女性像」なるものが存在している。本作のちひろもそういった女性の幸せを押し付けられる場面がある。弁当屋で働く独身女性=寂しいの方程式に当てはめてくる元同僚など、過去に仲の良かった人でさえもちひろの事を肯定的にみない。

そんな彼女ではあるが、何をやろうと風俗嬢の頃から心に持っている芯の部分はぶれていない。ちひろが正しいと思って進む生き様に間違いは無く、彼女のカッコ良さは前作から変わっていないのだ。

世間的に言う「家族の幸せな姿」は、ちひろに取っては大した事の無い人の集まりにしか過ぎない。もちろん、幸せな家庭像を夢見るちひろもいるのだけど、彼女にはそれを見る事が許されない幼少期を送っているので今になって誰かがどうこういうのもオカシイのだ。

そして、そんなちひろの過去があるからこそ、本作ではちひろの言葉に共感したり助けられる人が出てくる。安っぽい心配の声よりも、無言で渡される「ちひろからの弁当」が何よりの救いだったりする

「人間の情」というのは、普通に日常を送るだけではお目に掛かれないが、本作を読んでいると色んな「情」が見えてくるのが楽しい。ちひろが誰よりもオンナっぽく、人間味に溢れた魅力的な女性である事は本作を読んで感じ取って欲しい。風俗嬢から弁当屋になっただけで、中身は何も変わらない「ちひろ」をご堪能あれ

「生きる」に疲れた人が読むべき漫画

自由を探して生きるんだけど、どこにいっても自由が無いという人がいる。私もどちらかというと自由が無い。何だか自分の中で勝手に制限を作って、このキャンパスの中で絵を自由に描けと言われているような感覚だ。キャンパスから飛び出て描きたいけどそれが出来ない。

しかし、ちひろはどうだろう。彼女はとても自由じゃなさそうなところでも自由に生きている。彼女は、自分で制限を蹴破って外にどんどん出て行く。誰も彼女を止められないし、彼女も止まるつもりなんてサラサラ無い。しかし、その自由は彼女が困難に向き合って勝ち取った証拠でもある。彼女自身が自分を生きやすい世界に向かわせているのだ。

時には疲れを見せる彼女だが、そんな時でも小さな幸せを見つけたり、心許せる人に会いに行ったり。マダムという猫に会いに行くなんてのも、ちひろに取っての自由の選択だ。彼女から学ぶ事は多く「生きる」という日常に疲れた人は、読んでみると癒される物があるのではないだろうか

ちなみに、前作から入っても本作から入っても意味はわかる内容。前作から読んでいる人は、新しいちひろを発見できるし、本作からちひろを知る人は風俗嬢時代の話を読むと、彼女の発言にある説得力がさらに増すかと。「ちひろ」という存在そのものが魅力的。

サブコンテンツ

このページの先頭へ